テニス指導教本Ⅱ

内容

トップアスリートを育てるために

『テニス指導教本Ⅰ』に続く本書では、テニスの競技力向上を目指す内容となっている。競技力向上に必要な情報として、バイオメカニクスと技術、戦術、指導法、コンディショニングとメンタルスキルを取り上げた。本書の内容は、すでにトップアスリートを目指す選手の育成・強化に携わっている指導者、そして今後育成・強化に取り組むべくレベルアップを目指す指導者にとって、またトップアスリートを目指すプレーヤーにとっても有意義な情報を提供するものである。

目次

まえがき

第1章 テニスの競技力向上を目指して

1-1 指導者の役割
1.テニス競技者に求められるもの
  状況判断能力/協調性(チームと個の調和)/国際的な価値観の理解
2.競技者を育てる視点
  スポーツの原点を理解させる/「心技体知」のバランスを理解させる
3.競技者育成のマネジメントの在り方
  現状把握と目標設定/グローバルなマネジメント体制
  長い期間(ロングターム:long-term)にわたる育成

1-2 世界の動向
1.諸外国の現状
  男子/女子
2.ヨーロッパと北米の強化の在り方
  基本情報/ハイパフォーマンス施策に関する情報
  ディベロップメントプログラムに関する情報/情報医科学に関する情報
3.世界的視野でのテニスの今後

1-3日本の現状
1.日本人の活躍
2.日本テニスの目指す方向
  日本テニス協会(JTA)の中長期戦略
  強化育成本部の中長期強化育成プラン2022
3.テニス人口

1-4 トーナメントの仕組み
1.ジュニアツアーの仕組み
2.男子ツアーの仕組み
3.女子ツアーの仕組み

第2章 テニスのバイオメカニクスと技術

2-1 テニスのバイオメカニクス
1.技術指導に求められる2つの課題
2.近年のテニスのプレースタイル

2-2 バイオメカニクス的観点から見る基礎技術
1.サービス動作のバイオメカニクス
  準備局面(バックスイング局面)/主要局面(フォワードスイング局面)
  終末局面(フォロースルー局面)
2.グラウンドストロークのバイオメカニクス
  準備局面(バックスイング局面)/主要局面(フォワードスイング局面)
  終末局面(フォロースルー局面)
3.ネットプレーのバイオメカニクス
  準備局面(バックスイング局面)/主要局面(フォワードスイング局面)
  終末局面(フォロースルー局面)

第3章 テニスの戦術

3-1 戦術の基本的方針
1.トーナメントの戦略と戦術の基本
  トーナメント戦略の基本/戦術の基本的な考え方
2.ラリーにおける3つの場面の基本戦術
  ポイントの最初の局面/お互いを探り合う局面/最後の決めの局面
3.戦術を支える要素

3-2 シングルスの戦術
1.勝つためのセオリー──過去の試合に学ぶ
  伊達公子選手 vs シュティフィ・グラフ選手(1996)
  錦織圭選手 vs ジェームズ・ブレーク選手(2008)
  大坂なおみ選手 vs セレナ・ウィリアムズ選手(2018)
2.攻撃と守備のセオリー
3.プレーの特徴に対する戦術
  心理面から/体力面から/技術面から
4.補助的戦術
  アングルショット、ドロップショット/セカンドサービスに対する攻撃
  ダブルファースト、ネットダッシュ

3-3 ダブルスの戦術
1.サービス時のサーバー側とレシーバー側それぞれの戦術的ポジション
  オーストラリアンフォーメーション/Iフォーメーション
2バックフォーメーション
2.攻撃と守備のセオリー
3.女子ダブルスを対象としたゲームパフォーマンス分析に基づく戦術
  サービスを生かしたプレー/ダブルス特有のプレー

第4章 テニス指導の実際

4-1 ゲームに基づいた指導
1.ゲームに基づいた指導(Game Based Approach)
2.5つの場面におけるゲームに則した指導
  サービスの場面/リターンの場面/ラリーの場面/攻撃的な場面
  守備的な場面
3.指導の実際とその要点

4-2 ジュニアプレーヤーの指導
1.長期的視点によるパフォーマンス育成
  長期的なパフォーマンス育成の現状
  テニスパフォーマンスの育成と発育発達の関連性
  ハイパフォーマンスなテニスを目指すための長期的視点
長期的育成プラン作成に必要な考え方
2.ジュニア時代に開発すべきスキルと考え方
  打球技術における正しい動作スキルの開発
  バリエーションに富んだ打球スキルの開発/戦術的状況の理解
  自ら考える力の開発/パワーテニスへの移行とテニススキルの完成度の追求
  戦術的バリエーションの増加/攻撃的なテニス(時間と空間)の理解と実践
  個人のゲームスタイルの確立
3.ゲームに基づいたトレーニングを進めるためのガイドライン

第5章 車いすテニスの競技力向上

5-1 車いすテニスの動向
1.車いすテニス協会の始まりと現状
2.わが国の車いすテニスプレーヤー育成と強化
3.諸外国の現状

5-2 車いすテニス競技とは
1.車いすテニスの競技特性
2.クラス分け
3.大会の仕組み

5-3 競技用車いすについて
1.競技用車いすの進化
2.プレーヤーに応じた競技用車いす

5-4 車いすテニス競技の練習法
1.チェアーワーク(5つのターン)
2.ドリル
  バックターンを入れた球出しドリル/横8の字ターンを入れた球出しドリル
  ドロップショットの処理とロブの返球の球出しドリル
3.戦術
戦術1:短いボールを利用して、ネットへ出してからのロブ
戦術2:バックハンドへトップスピンボールを打って、高い位置でボールを取らせてチャンスボールを引き出す
戦術3:正面(ボディー)へ打ち込み、相手の動きを止める
戦術4:相手がターンする方向の逆をついてターンさせる
戦術5:チャンスボールは相手の背中側へ打つ

第6章 テニスのコンディショニング

6-1 コンディショニングとは
1.コンディショニングの重要性
2.テニスパフォーマンス向上のためのコンディショニング要因
  コンディショニングの基本的要因./トレーニング時の留意点
3.テニスプレーヤーに必要なセルフコンディショニング
  セルフコンディショニング/セルフケア/セルフチェック
4.トーナメントでのコンディショニングの考え方
  運動負荷を知る/体温調整/トーナメント中の運動負荷の考え方

6-2 ピリオダイゼーション
1.トレーニング計画の基本的な考え方
  ピリオダイゼーションとは/周期(サイクル)の設定
  休息時間の確保/期分け/トレーニングによる運動負荷との関係
2.トレーニング計画立案の手順
  トレーニング計画立案の手順/中期サイクル(1年間)のモデル例
  休息の取り方/具体的なトレーニング計画の作成/計画の見直し
3.体力トレーニングのプログラムデザイン
  基本的ガイドラインの確認/体力トレーニングの強度の把握
  プライオメトリックトレーニング
  準備期・競技準備期におけるトレーニングメニューの具体例
  トレーニングプログラム立案時に考慮したいこと

6-3 体力テストの実施と評価
1.体力テストの目的と効果
2.テニスパフォーマンスに求められる体力・運動能力要素
  テニスの競技特性と求められる体力・運動能力要因
  一般的体力・運動能力と専門的体力・運動能力
3.体力テストの項目の選定
4.ブロックトレセンでの体力テスト
  同意・問診/身体特性および関節の柔軟性/関節最大角度の測定
  一般的体力・運動能力/専門的体力・運動能力
  体力・運動脳尾力テストの実施方法
5.体力テスト実施の注意点
6.体力テストの評価と活用方法

6-4 テニスの栄養と食事
1.プレーヤーとしての食事の考え
2.食事の基本
  食事の基本カテゴリー/エネルギー必要量
  エネルギー必要量別目安量
3.テニス競技と食事(期分けと食事)
  試合期間の食事/水分補給

6-5 メディカルチェックとスポーツ外傷・障害の予防
1.メディカルチェックの意義と内容、評価
  メディカルチェックの目的と意義/メディカルチェックの種類
  メディカルチェックの内容/メディカルチェックの評価と活用
  メディカルチェックの現状と今後の課題
2.テニスプレーヤーに多いスポーツ外傷・障害とその対応と予防
  テニスプレーヤーに多いスポーツ外傷・障害
  主なスポーツ外傷・障害とその対応と予防
6-6 アンチ・ドーピング
1.テニスとアンチ・ドーピング
  ドーピングとは/テニスとドーピング
2.ドーピング禁止条項
3.禁止される薬物と方法の基礎知識
4.病気の時の対処法
  薬局で薬を購入する時/病気で病院を受診した時
5.気をつけたい薬の知識
  風邪薬類/漢方薬/サプリメント/糖質コルチコイド
6.病気の治療のために禁止薬物の服用が必要な時──TUE申請
7.検査に当たった時
8.ドーピング違反に問われた時
9.その他
  食肉汚染による禁止薬物摂取の可能性/ドーピング通報窓口

第7章 テニスのメンタルスキル

7-1 テニスプレーヤーに必要なメンタルスキル
1.プレーヤーとしてまず身につけるべきもの
  自信を持つ/常に挑戦する/常にあきらめない/自分を知る
  目標を立てる/日記をつける/本当の原因に向き合う
2.チャンピオンになるために
  モチベーション/集中力/感情のコントロール
  思考のコントロール

7-2 メンタルスキルの向上
1.目標設定
  目標設定の効果/目標設定の原理・原則
  目標を達成するための4つの要素/目標設定の方法
2.自信を高める
  自信に影響する要因を高める/能力に対する自信を高める
  結果や目標に対する自信を高める/一般的な自信の高め方
3.リラクセーション
  腹式呼吸/漸進的筋弛緩法
4.サイキングアップ
5.集中力

7-3 プレーヤーのメンタリティを把握するために
1.心理テストを活用するにあたっての注意点
2.心理テスト一覧

7-4 メンタルトレーニング
1.メンタルトレーニングとは
2.メンタルトレーニングの進め方の一例
3.メンタルトレーニングの専門家を活用する

第8章 トーナメント出場に必要なルールと倫理

8-1 競技者として必要なテニスルール
1.テニスルールと国際大会の競技規則
2.JTAテニスルールブック
3.競技者として必要なテニスルール
  シングルススティックの立て方/様々な試合方法
  サービスとリターンをする時、および関連するコードオブコンダクト
  妨害行為をしていないか
  セルフジャッジの試合における選手のコール(判定)とレフェリーの役割

8-2 トーナメント規則および選手の守るべきコード
1.エントリーとウイズドロー
2.サインイン――本戦選手、予選選手、ワイルドカード、オルタネイト、ラッキールーザー
  サインイン─本戦選手、予選選手/ワイルドカード
  オルタネイト/ラッキールーザー
3.遅刻
4.試合中のコード
5.コード違反のペナルティ
6.セルフジャッジ
7.アンチ・ドーピング規程
8.倫理規程および処分手続き規程
9.TIUテニス腐敗防止規則

8-3 スポーツ・インテグリティと倫理規程
1.スポーツの持つ価値
2.日本スポーツ界で共有されるべき認識
3.スポーツ・インテグリティを脅かす要因
4.JTAの対応
5.倫理規程
6.処分手続規程
7.試合におけるフェアプレー
8.スポーツ・インテグリティの新たな展開

さくいん
あとがき
執筆者一覧

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