異言語間コミュニケーションの方法

媒介言語をめぐる議論と実際

異言語間コミュニケーションの方法
著者 木村護郎クリストフ
ジャンル 書籍 > 言語・言語学 > 入門
大学テキスト > 言語学・コミュニケーション学 > 言語学
出版年月日 2021/08/19
ISBN 9784469213850
判型・ページ数 A5・258ページ
定価 2,860円(本体2,600円+税10%)

内容

言語の違いを乗り越える方法はさまざま

異言語間コミュニケーションの諸手段を体系的・網羅的に考察。一方の母語か双方の母語か、第三の言語か、通訳・翻訳を用いるか、単独の言語なのか混合するかなど、多様な選択肢が検討される。後半ではヨーロッパで最も断絶した言語境界線といわれるドイツ・ポーランド国境から、諸手段が現実に用いられる様子を観察する。

目次

まえがき

第一部 異言語間コミュニケーションの諸方略――ヨーロッパの議論から

第1章 先行研究と本書の枠組み

1.1 媒介言語論とは何か
比較媒介言語論に向けて/社会言語学における媒介言語論の位置づけ

1.2 比較媒介言語論の枠組み
これまでの研究動向/比較媒介言語論の枠組み
■コラム1 単一化は効率的なのか? ――エネルギーミックスから考える媒介言語方略の多角化

第2章 共通語があれば大丈夫?

2.1 ネイティブ規範からの解放をめざして――共通語としての英語
英語の光と影/英語普及のアクセルを踏むべきかブレーキをかけるべきか/「共通語としての英語」論/ELF論の困難
2.2 より公正な代案をめざして――計画言語エスペラント
エスペラント理解におけるギャップ/エスペラントの利点/エスペラントへの批判や疑問/英語とエスペラント
■コラム2 英語の共通語化とブレグジット

第3章 なぜ相手の言語を学び使うのか

3.1 なぜ共通語だけではだめなのか――多言語・複言語主義
英語以外の言語を学ぶ意義/ヨーロッパ統合の深化のために/複言語主義とは何か/多言語・複言語主義への批判/共通語と相手言語の住み分けに向けて
3.2 究極の理想主義? ――自言語不使用
「異言語による多言語対話」の提案/自言語不使用原則は本当に理想的か/自言語不使用の実践の可能性と困難/多言語・複言語主義と自言語不使用
■コラム3 わたしの言語パスポート

第4章 自分の言語を使うには

4.1 間接性ゆえの付加価値――言語的仲介(通訳翻訳)
EUにおける言語的仲介の重視とその理由/通訳はお金や時間がかかり、質が落ちる?/言語的仲介ならではの利点/言語能力としての仲介能力/機械翻訳にどこまで頼ることができるか
4.2 言語の多様性を尊重して活用する――受容的多言語使用
聞く / 読むことならできるかも/受容的多言語使用の推進/言語教育における可能性/限界を乗り越えるために/言語的仲介と受容的多言語使用
■コラム4 映画『スター・ウォーズ』にみる受容的多言語使用

第5章 組み合わせと混合

5.1 消極的な方略――組み合わせて使う諸形態
5.2 再評価に向けて――混ぜて使う諸形態
■コラム5 映画『ワン・デイ・イン・ヨーロッパ』における媒介方略

第二部 異言語間コミュニケーションの実際――ドイツ・ポーランド国境の調査から

第6章 断絶から交流へ――国境の成立から国境地域の現状まで

6.1 ドイツ・ポーランド国境地域――国民国家の辺境から欧州統合の結び目へ
言語境界地域への注目/オーダー・ナイセ国境の成立と確定/越境交流・移動からみた国境地域の変遷/国境地域における課題としての言語
6.2 本書の調査地域と調査概要
二重都市フランクフルト・アン・デア・オーダー/スウビツェ/両市の交流と協力/新しい境地を開くノヴァ・アメリカ/調査の内容と時期/考察の手順
■コラム6 国境をまたぐ大学と祭り

第7章 前提としての非対称性――地域の言語事情

7.1 外国語教育の非対称性
ドイツにおける英語およびポーランド語教育/ポーランドにおける英語およびドイツ語教育/フランクフルト/スウビツェ両市における外国語教育/非対称な前提
7.2 言語景観から見える言語事情
言語景観という観点/ドイツ・ポーランド国境地域における言語景観/領域性の持続のもとの非対称的な境界域形成
■コラム7 どうする? ポーランド語文字

第8章 主要な媒介方略の意義と限界

8.1 基本方略としてのドイツ語と補助としての英語
中欧における地域通用語としてのドイツ語/存在感の薄い英語/英語力の不足/英語を避ける言語イデオロギー/ポーランド語に対するドイツ語の優位/まとめ
8.2 交流と協力を支える通訳と翻訳
通訳の用いられる諸領域/言語的仲介の担い手/通訳の意義/通訳の限界/二言語による情報提供/まとめ
■コラム8 推理小説に描き出される言語事情

第9章 代替的な媒介方略の可能性

9.1 あえてポーランド語を使う意味
「必要性」にとぼしいポーランド語/だからこそポーランド語を使う意味/象徴的ポーランド語使用の実際/実用的ポーランド語使用/相互の相手言語使用/まとめ
9.2 聞いて / 読んでわかる人のための受容的二言語使用
ドイツ語とポーランド語の受容的使用/どのようなときに使われるのか/モデルとしての演劇/教育における応用/まとめ
9.3 混合言語「ポイツ語」は生まれるか
「ポイツ語」による連帯感/言語能力の不足による言語混合/双方の尊重と一体感/高度な言語混用/越境的アイデンティティをめざす「ノヴァ・アメリカ語」/まとめ
9.4 出会いの場をもたらすエスペラント
エスペラント史におけるドイツ・ポーランド関係/エスペラント交流の現在/なぜエスペラントか/まとめ
■コラム9 さらなる架け橋――古典語ラテン語と少数言語ソルブ語

結論部 もう一つの言語的多様性

第10章 まとめと展望

10.1 諸方略の一般的な特徴
相対的な長所と短所/長所と短所を補い合うために
10.2 ドイツ・ポーランド国境地域における諸方略の使い分け
媒介方略の現状/使い分けの可能性/実現に向けた課題
10.3 日本にとっての意味
ヨーロッパは日本にとって参考になるか/言語的媒介方略と「節英」/言語教育の課題

あとがき
参考文献

ジャンル