内容
漱石が歩いた坂から見える新たな文学空間
夏目漱石研究の第一人者が、「漱石と地理・場所」をテーマに、新しい楽しみ方を提示する。東京の地理に深く結びついた漱石の数々の作品を読み直し、また、都バスに乗ってまわる漱石文学ツアーで、点在するゆかりの地を体感する。これまでにない極上の漱石案内。
目次
口絵――凸凹地図で歩く漱石の世界
Ⅰ 漱石が生きた「場所」
1 馬場下――よみがえる記憶
2 本郷・小石川――東京山の手の地形から
3 松山――描かれた場所が息づく時
4 熊本――「美」と「力」の世界の造型
5 パリ――万博のにぎわいの中で
6 ロンドン――霧の中の都市と緑の自然と
7 千駄木――作品の背景としての本郷台
8 早稲田南町――「漱石山房」に集う門下生たち
9 修善寺――空と雲を見る眼
10 関西地方――百年前の建物の中で
11 早稲田南町2――硝子戸の内と外
12 時空を超えて――最晩年の達成
Ⅱ 「時代」の奧に潜むもの
1 『三四郎』と恋愛
2 『それから』と新聞
3 『門』と宗教
4 『悲願過迄』と市電
5 『こゝろ』と山の手
6 『道草』と家
『猫』と漱石
「吾輩」の二文字の出現/「吾輩」には名前が無いのか
猫の絵はがきはどこに/水彩画を描く楽しみ
不思議な鋏から/「性格」の一語の意味するもの
『猫』は、子規への便りか?/百年を見据えつつ
「何だか分らない」をもたらす「鏡」の世界
「といふものは」という表現/未来にむけての種子として
<コラム>全集を読む楽しみ
Ⅲ 「虚」の空間を歩く
1 空白の空間
2 藁屋根のある風景
3 小石川の「灯影」
4 渦巻く空間
Ⅳ 坂と台地からみた漱石作品
1 坂の機能の意味するもの
2 機能の拡大――『三四郎』まで
3 『それから』に見る達成
4 交通機関のもたらすもの
5 象徴性への深まり――『こゝろ』以後
<コラム>原稿・初出・初版本
『坊っちやん』と漱石
息継ぎをしないで読む/「…たから」の論理
二つの「坊っちやん」/清の言葉遣い
坊っちやんの愛読書/マドンナの沈黙/座敷歌の世界
<コラム>文学館・図書館・記念館
Ⅴ 都バスでまわる漱石一日ツアー
はじめに――西の郊外から
小滝橋――一つの葬列
戸山・早稲田――牛込台地の高台から
早稲田・江戸川橋――昔の面影
大曲・伝通院・春日――小石川の起伏
本郷――人々の出会いと別れ
足を延ばして
牛込/小石川/本郷/上野公園/浅草/神田
Ⅵ 東京を遠く離れて――地方都市・外国と自然の中で
1 松山
2 熊本
3 イギリス
ロンドンまでの足跡/ロンドンの足跡/スコットランドの足跡
あとがき
[年表 漱石と明治]
[文学館案内]
[初出一覧]
[地名・場所名索引]
[関連地図一覧]
坂と台地からみた東京地図/小滝橋周辺/[上69]バスルート/牛込・小石川/本郷・上野/浅草/神田/松山/熊本/ロンドン