内容
日本人が追い求めてきた「美しい生き方」とは
「男の美学」「敗者の美学」などの言葉からもわかるように、日本人は、生き方や生活のあり方について、道徳や合理性とは別の、「美しさ」という判断基準を必要としてきた。そんな、日本人が追求してきた「生き方と生活の美学」を、「いき」「風流」「みやび」「わび」といった言葉に着目しつつ、古代から近世の日本文化に即して解き明かす、意欲的な日本論。
目次
序 生活の美学――生き方のスタイル、生活のデザイン
Ⅰ 王朝の文雅
1 額田王の贈答歌
2 和歌の舞台――時と所
3 大悪天皇
4 文雅と遊宴
Ⅱ 万葉集の風流
1 中国の風流と好色
2 『万葉集』の「風流」
3 歌の母
4 松浦の仙女
Ⅲ 宮廷の「みやび」と「すき」
1 風流からみやびへ
2 「雅俗」と古典主義
3 『伊勢物語』の「みやび」
4 「美の礼拝」と色好み
5 「すき者」と好色
Ⅳ 数寄と道
1 歌人たちの花見
2 後鳥羽院の花見
3 定家の不機嫌
4 後鳥羽院の数寄生活
5 数寄と道
Ⅴ 婆娑羅の風流
1 佐々木道誉の風流
2 婆娑羅の花見
3 古典文化と輸入された文化
4 遊宴の茶会
5 茶数寄の条件
Ⅵ 隠者の侘数寄
1 禅林の茶と岡倉天心
2 嵯峨天皇と納涼の宴
3 ゲームとしての茶の湯
4 隠者の遊び
Ⅶ 雅の風流と俗の風流
1 煎茶の清風
2 清貧と清福
3 風流の世俗化
4 雅人と俗物
5 風流の条件
Ⅷ 「いき」と「すい」
1 江戸の「意気」と上方の「粋」
2 丹前と男伊達
3 「通」と「すい」
4 「いき」の意味の拡張
Ⅸ 「いき」の美学
1 「出ず入らず」――美の追求の忌避
2 「半可通」と「野暮」――「恥」の文化
3 「いき」の表と裏――二重構造のしかけ
4 幽玄――想像された美
5 「くずす」と「外す」――不完全の美学
6 「いき」と「婀娜(あだ)」――美女の基準
7 美の革命――「雅」から「いき」へ
参考文献
あとがき