やりとりの言語学

関係性思考がつなぐ記号・認知・文化

やりとりの言語学
著者 N.J.エンフィールド
井出祥子 監修
横森大輔
梶丸岳
木本幸憲
遠藤智子
ジャンル 書籍 > 言語・言語学 > 各論
出版年月日 2015/12/20
ISBN 9784469213539
判型・ページ数 A5・402ページ
定価 4,180円(本体3,800円+税10%)

内容

人間社会の単位は果たして「個人」なのか?

人と人との相互行為はそもそもどのように成り立っているのか。ラオスでのフィールドワークの成果を生かしつつ、記号論の枠組みを活用し「関係性」に焦点を当てることで、今日まで十分に接点が見出されていなかった記述言語学、会話分析、民族学、言語人類学、社会言語学、認知科学など多くの学問領域の統合をめざす野心的な試み。

目次

監修者まえがき
日本の読者の皆様へ
謝辞

序章

第1章 関係性のありかた
1.1 関係性の具体例
1.2 コンテクスト
1.3 関係性思考
1.4 関係性の具現化
1.5 関係性に根ざした社会

第2章 社会性
2.1 人間の社会的知性
2.2 社会的な動機付け
2.3 査定と管理のための道具
2.4 記号過程
2.5 規範とヒューリスティクス
2.6 道具使用としてのコミュニケーション
2.7 コミュニケーションにおける2つの基本的要請

第3章 エンクロニー
3.1 エンクロニーとその射程
3.2 意味理解のための因果的枠組み
3.3 規範による組織化

第4章 記号現象
4.1 記号過程の解剖
4.2 記号過程の柔軟性
4.3 記号過程としての推論
4.4 記号過程としての文化の疫学
4.5 記号過程の諸要素とそのタイプ
4.6 この枠組みの利点
  4.6.1 一般性
  4.6.2 包括性
  4.6.3 学習可能性
4.7 ソシュール派における記号:有用だが真実でないもの
4.8 型枠‐内容物のダイナミクス
4.9 意味は公的なプロセスである

第5章 地位
5.1 地位は行動を予測し説明する
5.2 権限と能力
5.3 地位としての関係性

第6章 ムーブ
6.1 ムーブは複合的な記号である
6.2 複合体としての発話は総体として解釈される
6.3 ターン交替システム:言葉をまとったムーブ
6.4 特権的な記号現象としてのムーブ

第7章 認知
7.1 行動を読み取る
7.2 認知と言語
7.3 解釈ヒューリスティクスとしての心
7.4 認知が怖い?

第8章 行為
8.1 自然的行為と社会的行為
8.2 行為の展開
8.3 言語行為と《行為》
8.4 《行為》は分類できるか?
8.5 《行為》を複合体として捉える
  8.5.1 複合体としての《行為》その1:複数の記述レベル
  8.5.2 実践vs行為
  8.5.3 複合体としての《行為》その2:発話のマルチモーダル性
8.6 《行為》のオントロジー
8.7 《行為》の生成モデル

第9章 行為主体性
9.1 柔軟性と説明責任
9.2 行為主体の統合というヒューリスティック
9.3 行為主体性の融合
9.4 行為主体性の分散

第10章 非対称性
10.1 命題、および知識の相対性
10.2 認識的権威
10.3 実践における行為主体性の分散
10.4 非対称性の源
10.5 コミュニケーションシステムの不完全性

第11章 文化
11.1 文化システム
11.2 社会関係におけるシステム的なコンテクストとしてのクリの家屋
11.3 コミュニケーションにおける儀礼
  11.3.1 やり方:認識可能性と評価のための形式的制約
  11.3.2 作法:儀礼・協力・道徳的秩序
  11.3.3 まとめ:日常的儀礼はやり方と作法が出会う場所である
11.4 クリの住宅
  11.4.1 クリ家屋の間取り
  11.4.2 クリ家屋の社会的側面
11.5 クリ住宅の実践的解釈:規範に従うということ
11.6 空間配置と図式的類像性
11.7 規範による制裁:暗黙のものを明示化する
11.8 日常的儀礼と社会関係

第12章 文法
12.1 システムとしての言語
12.2 連辞関係:ターンのための文法
12.3 諸言語の文法にみられる範列関係
12.4 有標性:システム内の特別な選択とその効果
12.5 ラオ語の人物指示システム
  12.5.1 ラオの社会組織におけるヒエラルキー意識
  12.5.2 代名詞
  12.5.3 ラオ語の名前と名前につく接頭辞
12.6 ラオ語におけるデフォルトの人物指示形式
  12.6.1 会話におけるヒエラルキー意識の維持
12.7 語用論的に有標な最初の言及
  12.7.1 語用論的に有標な接頭辞
  12.7.2 接頭辞の省略
  12.7.3 まとめ
12.8 文法はひそかに社会関係を表す

第13章 知識
13.1. 共通基盤
13.2. 共通基盤の源
13.3. 共通基盤によって促進される拡張的推論
13.4. 推論するための基盤化
13.5. 聞き手に配慮したデザイン
13.6. 協調関係と情報
13.7. 情報から社会関係へ

終章

参考文献
索引
訳者あとがき

ジャンル