内容
悩み多き「男子の性」に今こそ学びの光を
これまで性教育といえば、内容も対象も「女子」が主であり、「男子の性」は置き去りにされてきた。いま、若い男性のなかには自分の性を肯定的に受け入れられない者が増えているという。本書ではその実態を明らかにするとともに、その原因を探りつつ、若い男子に向けた「男子の性」に関する教育を提唱する。
目次
◆まえがき
第1章 意外なデータ――自分の性に対する肯定感調査から――
1 高校生の「射精観」「月経観」に関する二つの調査
(1)北海道での調査結果
(2)愛知県での調査結果
2 二つの調査結果から考えること
(1)男子高校生の射精に対する肯定感の低さをどう考えるか
(2)二つの調査結果がもたらした新たな問題意識
第2章 自らの性への肯定感を阻むもの
1 「男子の性」を学ぶことの重要性への気づき
2 射精が肯定的に受け入れられにくい三つの理由
(1)精液はなぜ白っぽくてねばねばしているのか
(2)精液は尿道を通って出てくるので汚いのではないか
(3)射精のときの快感のために自分の性をいやらしいとか卑しいと思ってしまう
第3章 射精の快感とセルフプレジャー
1 セルフプレジャーの積極的意味とは何か
2 生涯の性におけるセルフプレジャーについて
3 セルフプレジャーのエチケット、マナーについて
4 女子のセルフプレジャーについて
第4章 男子大学生は「男子の性」の講義をどう聞いたのか
1 講義を開いた男子大学生の声
(1)もっと早く学んでいれば
(2)言い知れない罪悪感のようなもの
(3)深い葛藤をくぐり抜けられるのか
(4)学んでういればこそ、学べばこそ
2 「男子の性について」の講演を聞いた男子高校生(一年)の声
第5章 女子大学生は「男子の性」の講義をどう聞いたのか
■講義を聞いた女子大生の声
(1)「男子の性」について学んで感じる親しみ
(2)自分の性を肯定できないと、相手の性も肯定しにくいという考え
第6章 男子の性被害の重さ
1 男子は性被害に遭わないのか
2 男の子の性を優しく見つめる、優しく育てる
3 遊び、いたずら、悪ふざけ、性的虐待について考える
4 二八五〇人の女性、一四四人の男性の性被害
第7章 柔らかな関係づくりと性的自己肯定感――快楽の性を見つめ直す――
1 性の三つのあり方について
(1)生殖としての性
(2)快楽としての性
(3)支配としての性
2 「快楽の性」への歩み
(1)ふれあいの始まり
(2)育ちの中でのふれあいの広がり
3 性的親密性の深まり
4 自己解体できる自信と「遊び・戯れ」との関係性について
5 二人で紡ぎ出す性の快楽
6 「ポルノの性」と「エロスの性」と
7 Too hard から Softer へ
第8章 男子の性教育のエッセンス
1 自らの性がいのちの成り立ちに深くかかわっていることの自覚
(1)生殖への直接的なかかわりのスタート
(2)相対的に自立した生命体としての胎児
(3)男性の中の「母性」
(4)生殖にかかわる長い人生
2 女性の性への深い理解こそ、柔らかな関係づくりの基礎
(1)女性の性、からだとこころの変化
(2)卵胞期とは何か
(3)排卵
(4)黄体期について
(5)ピルと避妊のこと
(6)ホルモン分泌と自律神経
3 「月経」について学んだ大学生の声
(1)男子学生の声
(2)女子学生の声
4 性の多様性について認識することの重要性――いろいろな人、いろいろな性、そして自分……
(1)からだ(性器)の性別とこころ(脳)の性別の不一致
(2)誰が誰を愛するかは当事者の自由と人権の問題
第9章 「性教育のこれまでとこれから」そして「その後」
1 一覧で見る、性教育のこれまで、これから、その後
2 性的教養としての学習のポイント
◆参考図書
◆おわりに