内容
いま、武道が問われている!
近年、武道をめぐる環境は大きく変わった。いま、まさに、日本の伝統的文化といわれる武道とは、どのような価値を持つ文化なのか、が問われる時代となったのである。教育の場における武道の必要性、戦前・戦中と現在の武道の違い、武道の国際化の必要性など、国際社会における日本武道の役割を明らかにする。
目次
本書の刊行にあたって
序章 武道とは何か
1 日本武道の独自性
(1)緒言
(2)武道の本質―殺傷性と無限定性―
(3)練習法について―守・破・離―
(4)現代武道の在り方―「競技」と「形」―
(5)武道の理想―「和」の武道ということ―
(6)「無構え」から「無心」へ―現代武道の教育理念として―
2 日本武道の本質
(1)武力と暴力
(2)「わざ」より「みち」へ―克己内省の「道」―
(3)古流武術の競技化―「勝負の場」を「教育の場」とする―
(4)生涯体育としての武道―「競技」と「形」の練習法―
(5)まとめ
I章 武道の現代化とは・・・伝統と近代の調和
1 伝統の武道と現代の体育
2 武道と体育思想
(1)武道の語義
(2)必勝の信念でつらぬいた生活
(3)武道と宗教
(4)武道とスポーツとの対立
(5)武道のスポーツ化に対する二つの反論
3 武道の技術の変遷―古い武道から新しい武道へ―
(1)まえがき
(2)民主的倫理観
(3)技術が分化される
(4)技術を鈍化する
(5)技術を様式化する
(6)新時代の武道
4 形(フォーム)の研究
(1)まえがき
(2)形(フォーム)の意義と性格
(3)形と技法
(4)形と「力」「気」「心」
(5)「形」の練習と「乱取」の練習
5 武道の現代化―その意義と方法について―
(1)「実戦の場」から「競技の場」へ
(2)倫理性と宗教性について
(3)古流の「形」と現代の「競技」
6 流派武道と競技武道―家元制武道の現代化について―
(1)緒言
(2)武道の語義
(3)武道における精神修養
(4)武道の「わざ」の本質
(5)秘法としての武道から体育文化としての武道へ
(6)武道はスポーツか
(7)武道の競技化にともなう問題点
7 学校武道の在り方―新しい鍛錬主義の体育として―
(1)体育における娯楽主義と鍛錬主義
(2)新しい鍛錬主義の体育
(3)新しい武道の「勝負観」
II章 柔道とは何か・・・「わざ」から「みち」へ
1 柔道における「自然体」の理論的解明
(1)緒言
(2)「行」の教育としての柔道
(3)人間の本質
(4)人間の尊厳
(5)「自然体」のかたち
(6)「自然体」の主動性
(7)「自然体」のはたらき―「眼」「足」―
(8)「自然体」のはたらき―「手」―
(9)「自然体」のはたらき―「構え」
(10)「自然体」のはたらき―「わざ」―
2 古流柔術の「わざ」の分類と練習法
(1)柔術とは何か
(2)「わざ」の分類
(3)「わざ」の練習法
3 武道の現代化に貢献した講道館柔道とその技術的発展
(1)はじめに
(2)古い武道の本質
(3)流派武道から競技武道へ
(4)柔術の技術構成と柔道の技術構成
(5)柔道原理による古流の「わざ」の解明
(6)「乱取法」の功績と将来への技術的発展―第二乱取法の制定について―
4 柔道と禅
(1)まえがき
(2)禅文化としての柔術
(3)柔術から柔道へ
(4)「柔道原理」とは何か
(5)「柔道原理」と「剣道原理」
5 「みち」としての柔道―嘉納師範の遺訓を中心として―
(1)嘉納師範の遺訓
(2)新しい「和」の武道として
(3)「わざ」より「みち」へ
(4)「みち」についての師範の講演
6 柔道の本質―嘉納師範の柔道観とその実践―
(1)緒言
(2)古流柔術の近代化
(3)柔道の独自性
(4)護身性の技術修行
(5)柔術の技術構成
(6)柔道の本質とその練習
III章 合気道の近代化・・・合気道競技の創造
1 「武術私見」―中里介山への書簡―
2 現代体育としての合気道競技
(1)まえがき
(2)武道の競技化ということ
(3)武道における「術」と「道」
(4)武道教育の特質
(5)古流柔術の近代化からとりのこされた半面
(6)古流柔術の「わざ」の多様性とその競技化
(7)「合気乱取法」の内容
(8)「形」の練習と「乱取―試合」の練習
(9)合気道競技の体育学的価値
(10)あとがき
3 合気道競技について―「当身技」「関節技」の練習体系―
(1)まえがき
(2)武道の特性と柔術の練習法
(3)柔術の変遷とその近代化
(4)「形」で習った「わざ」は「乱取」で生かされる
(5) 柔術は二つの「乱取」練習法を要する
(6)「合気道競技」の練習コース
4 合気道の過去・現在・将来―創部20周年を祝して―
終章 教育愛と体育
1 新制大学と体育
2 人間形成と教育
3 教育愛について
4 教育としての体育の重要性
解説 武道と富木謙治
〔I〕富木謙治と武道
〔II〕国際化社会と武道論
〔III〕富木武道論の特色
●富木謙治年譜
●富木謙治著作目録