内容
「敬語」教育に新しい視点!
「だれが、だれに、だれのことを」、そして「どういう時に、どういう所で、どういう状況で」、敬語を使うのか? 従来の「尊敬・謙譲・丁寧」などの分析的な考え方を抜け出して、コミュニケーションの中で敬語を捉え直した、新しい指導参考書。豊富な指導実践例に加え、適宜要点を「ポイント」欄に示した。
目次
第 I 章 「敬語表現」と「敬語表現教育」
1.「敬語表現」という捉え方
1.1 「待遇表現」としての「敬語表現」
「敬語」と「敬語表現」/「敬語教育」と「敬語表現教育」
1.2 「待遇コミュニケーション」「敬語コミュニケーション」としての「敬語表現」
1.3 「主体」
1.4 「人間関係」と「場」――「場面」
1.5 「意図」
1.6 「文話」――文章・談話
2.「敬語表現教育」のあり方
2.1 「待遇コミュニケーション教育」としての「敬語表現教育」
2.2 「人間関係」をどう扱うか
「相手レベル」と「コトバレベル」/「話題の人物レベル」/「レベル化」における留意点
2.3 「場」をどう扱うか
2.4 「意図」をどう扱うか
2.5 「文話」単位でどう扱うか
2.6 「敬語」をどう扱うか
3.「敬語表現教育」の実践方法
3.1 「自分」のことを表現するための実践方法
自己紹介/インタビュー/ご挨拶・スピーチ/面接/記者会見/トーク番組/口頭発表/発表会/話し合い・討論会
3.2 「行動展開表現」の実践方法
依頼表現/誘い表現/申し出表現/勧め・アドバイス表現/許可求め表現/許可与え表現/断り表現
3.3 「媒体」ごとの実践方法
電話/メモ書き/手紙・Eメール
3.4 プロジェクトワーク・コミュニケーション活動型授業の実践方法
4.まとめ
第 II 章 「気づき誘導」を求めて
――社会人・大学生に必要な待遇表現教育を模索する
1.配慮の示し方を探ること=待遇表現教育
1.1 高感度レーダーをつくる
1.2 非言語コミュニケーションの重要性
2.今までの敬語表現教育の問題点
2.1 日本人の問題点
身にならない知識教育/敬語は「尊敬を表す」表現か?/偏向した敬語指導がもたらす結果
2.2 外国人の問題点
遅すぎる導入時期/皮相的な教科書の扱い/軽視されがちな配慮表現
3.指導実践例
3.1 日本言語文化、日本人の発想ガイダンス
外国語としての日本語理解/日本語・日本人への誤解回避
3.2 理解優先の待遇表現教育
接客表現リスニング/メディアで待遇表現ウォッチング
3.3 気づきを誘導する発話指導
手紙の内容を伝える/ロールカードを作成させ、演じ合う/漫画『島耕作』を使ったモノローグ練習/ビジネス日本語ワークショップ/三者間の伝達ロールプレイ/人間関係維持のためのクッション用語獲得
4.今後の待遇表現教育のための課題
第 III 章 ビジネス場面に対応する敬語表現
――習得を促すアプローチの方法
1.ビジネスパーソンの「敬語」認識
2.アプローチの基本方針
2.1 学習者が既に持っている待遇表現の力を、日本語で発揮させること
2.2 受信を先行させた授業の組み立て
2.3 学習者の不利益や失敗の回避
3.アプローチの方法
3.1 会話の観察:こんなとき←→こう言っている
3.2 場面依存度の高い表現の導入:こんなとき→こう言う(1)
3.3 想定場面練習:こんなとき→こう言う(2)
4.達成目標の設定
5.アプローチの例
5.1 「会話の観察:こんなとき←→こう言っている」の例
教科書の会話の観察/ネット・カンファレンスの聞き取り
5.2 「場面依存度の高い表現の導入:こんなとき→こう言う(1)」を中心に
した例
見学コースの予約/電話の取り次ぎ/見舞いや賞賛を述べる/プレゼンテーション(プレゼンテーション用ソフトを利用して)/講演会の司会/報道発表を確認するインタビュー
5.3 「想定場面練習:こんなとき→こう言う(2)」の例
施設利用の手配/社内会議での報告/企業訪問インタビュー/就職面接試験の準備/面会依頼の交渉
6.教師に求められること
第 IV 章 初級からの敬語表現教育
1.問題意識
2.敬語表現指導のポイント
3.初級レベルにおける指導実践例
3.1チャンピオンのスピーチ
3.2 スキット会話
3.3 出席ゲーム
3.4 プロジェクトワーク
クラス・パーティー/インタビュー調査/調査報告発表会
4.まとめと今後の課題
第 V 章 「敬語表現教育」における「誤解」をどのように考えるか
1.「敬語」「敬語表現」に関する誤解
2.「敬語」の捉え方・考え方
2.1 「敬語」をどう捉えているか
「敬語」は封建的なものである?/「敬語」は「必要悪」である?/「敬語」は日本独自の文化である?/正しい「敬語」を使わなくてはいけない?
2.2 「敬語」をどう捉えればよいか
「敬語」体系の特色/「敬語」は「必要悪」とは言えない/「敬語」を含む「待遇」のシステムは特殊ではない/「敬語」の「正しい」使い方があるわけではない
3.「敬語」「敬語表現」に関する問題点
3.1 「敬語」に関する問題点
「尊敬語」「謙譲語」は適切な用語か/「敬語」は3分類でよいか
3.2 「コトバレベル」の問題
「コトバレベル」に関する誤解/「コトバレベル」の大切さ
3.3 「丁寧」の問題
「丁寧」であればよいのか/「丁寧さ」のあり方
3.4 「失礼」の問題
他の文化にもある「失礼」の考え方/日本語の「失礼」の概念/「ぞんざい」の捉え方
4.「母語話者」「非母語話者」の「敬語」の使い方
4.1 「母語話者」は「敬語」をどう使うか
4.2 「非母語話者」は「敬語」をどう使うか
学習者・教師の考え方/「敬語表現教育」は避けて通れない/「おすすめ表現」/「敬語」に関する判断・使い分けの必要性
5.「敬語」「敬語表現」をどう教えるか
5.1 「初級」で何を教えるか
5.2 「中級」「上級」で何を教えるか
「中級」「上級」での練習/「機能会話」の練習/「文体」の問題
6.これからの日本語教育のために
注
参考文献
ポイント一覧
索引