カルチュラル・スタディーズへの招待

内容

「文化」をとらえ直すための標準装備

文化研究のあらたなアプローチとして注目を集めるカルチュラル・スタディーズ。本書は、現代的分野で論点となっているテーマについて、〈キーワード〉+〈図書紹介〉+〈練習問題〉などの一連の記述を通して、文化理解のポイントを立体的に提示。自ら文化をとらえる視点を持ち、自分のことばでさまざまな問題をとらえ直すための、カルチュラル・スタディーズの「教科書」。

目次

序章 カルチュラル・スタディーズへのアプローチ――その問題意識
 1 グローバルとローカル
 2 〈文化研究〉と〈文化の研究〉
 3 現代文化における「年齢」と「健康」
 4 文化における問題領域を設定する
 5 「国家」「国民」とは何か?
 6 国民国家と語り
 7 国民国家は弱体化したか?
 8 周縁からの呼びかけに応答する
 9 〈文化〉をどう定義するか?
 10 カルチュラル・スタディーズの構え
 11 カルチュラル・スタディーズとグローバリズム/トランスナショナリズム
 12 文化の翻訳
 13 文化の政治学へ向けて
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第1章 他者――文化の力学
 1 個人と政治
 2 抵抗としての文化
 3 他者の文化
 4 旅行記のなかの自己と他者
 5 体験の相互性
 6 文化相対主義
 7 当事者の証言/観察者の評価
 8 私は何を知っているか?
 9 文化受容の政治学
 10 「出来事」の衝撃
 11 解釈と差別
 12 「真実」としての「秘密」
 13 解釈の暴力、伝統の誇り
 14 文化のなかの雑種性、逆説としての文化
 15 「連帯」としての批判に向けて
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第2章 言語――権力の言葉、言葉の力
 1 植民地支配と言語
 2 「英語」と「イギリス語」
 3 英語の国際性
 4 言語と植民地主義
 5 英語の「普遍性」
 6 植民地女性の征服
 7 歴史意識としてのポストコロニアリティ
 8 理論的実践としてのポストコロニアル研究
 9 フリールの国民主義
 10 歴史意識と国民的共同体
 11 植民地主義の否認をどう批判するか
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第3章 メディア――出来事への共振
 1 メディアの裏を読む
 2 ペルー日本大使館公邸占拠事件
 3 「日本人の安否」
 4 「事件」の深層
 5 メディアにおける武力行使肯定
 6 「武力行使」の現実
 7 日本人のペルーへの無関心
 8 マスメディアがとりあげたゲリラの「人間らしさ」
 9 慟哭する「チャビン・デ・ワンタル」
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第4章 SF――電子的身体の政治学
 1 ヴァーチャル・リアリティの「身体経験」
 2 コンピュータ・ネット上の仮装/仮想
 3 性的マイノリティのヒロイン
 4 SFの歴史とセクシュアリティ
 5 サイバースペースのアリス
 6 ヴァーチャル・セックスとしてのレズビアニズム
 7 サイバースペースと「文化感染」したセクシュアリティ
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第5章 都市――消費する/される人間
 1 都市生活者のまなざし
 2 近代のまなざし
 3 帝国主義の祭典
 4 消費文化の広告塔
 5 大衆娯楽的なスペクタクル
 6 革命から消費へ
 7 権力作用のミクロな考察
 8 象徴から記号へ
 9 オリンピック――スポーツの万国博
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第6章 スポーツ――境界を侵犯するアスリート
 1 国境を越えるスポーツ
 2 ナショナルに閉じられたベースボール
 3 「日本野球」の外部の出現
 4 共同体内の「異端児」の記憶
 5 敗戦体験を通じた「野球道」への反逆
 6 抗議から批判へ
 7 スポーツ・ジャーナリズムとナショナリズム
 8 境界侵犯する身体
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第7章 マンガ――若者文化の解釈学
 1 ○×試験と知識
 2 小林よしのり現象
 3 日常性の世代
 4 身体的実感主義
 5 インテリへの反感
 6 癒しの装置としてのマンガ
 7 歴史学の視点
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第8章 性――「弱者」への応答
 1 応答責任
 2 歴史習性主義と実証主義
 3 パラダイムと発話主体
 4 マジョリティが他者の問いに直面するとき
 5 応答する可能性の有無
 6 幼児虐待の記憶とトラウマ
 7 無力な犠牲者への同一化
 8 出来事・証言・国民化の語りの時間性
 9 「体験」としての性
 10 出来事の不意の到来
 11 証言と出来事の分有
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第9章 民族――断絶を超える架け橋
 1 弱者の痛み、強者の無関心
 2 プリーモ・レーヴィの生と死
 3 収容所における断絶
 4 「加害者」との再会
 5 ミュラーのような日本人
 6 「民族性」の超越とは?
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第10章 歴史――過去と現在の連接
 1 歴史的現在としての今
 2 忘却のポリティクス
 3 記憶のポリティクス
 4 関節の外れた時間
 5 応答可能性としての責任
 6 応答可能性としての戦後責任
 7 国境を越える応答責任
 8 「日本人」だけがなし得る戦後責任
 9 他者の呼びかけに応答する
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終章――文化の実践
 1 文化は生きている
 2 批判するカルチュラル・スタディーズ
 3 行動するカルチュラル・スタディーズ
 4 他者から見た歴史
 5 文化の力学
 6 専門領域の解体
 7 知の脱植民地化
 8 日常の政治の詩学のために

結語――記憶の演劇
事項索引/人名索引

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