内容
障害児がコミュニケーション手段を身につけ自立するまでの記録
「知恵おくれ」といわれる子どもたちに、まず何を教えるべきか? 一人で食事をすること? 一人でトイレに行くこと? こんな「生活指導」が中心であった障害児教育を打ち破り、ことばによるコミュニケーション指導を中心に教育を試みた教師たちは、子どもたちのめざましい進歩に目をみはった。本書は横浜国立大学附属養護学校における7年間の実践をもとに、二児の成長の記録を綴ったものである。遅々とした歩みながらも、他者と「ことば」をかよわす嬉しさをかみしめるようにして伸びていく子どもたちと、それを支える教師の姿を描き、ともに生きることの素晴らしさを語りかけている。
目次
【第1部 磯部陽一君の場合】
1 陽一君こんにちは
お話大好き、だけどなんでもアガアガ/自分の机わかるかな/ぼくの大好きなおはようの歌/おべんきょう はじめます!!/ほか
2 ことばを求めて
話したい気持ちはあるのに/ことばを出すために/吹いて遊ぼう/続けて言おう―母音/一つ一つの語音を出す/ほか
3 はなとよだれ
おはなきれい!/よだれ シュッ/信号を保持する/信号操作力を育てる/ほか
母の手記から
【第2部 小沼利樹君の場合】
1 はじめに
2 新しい教室
新しい教室を拠点に/ひとりでできるよ/食事と排せつ
3 身ぶりサインの形成
4 行動のエリアを広げる
ぼくは牛乳・パンの運び係/朝の散歩/自分の力でよりたくみに動く
5 むすび
母の手記から
【第3部 ことばの学習を考える】
言語と行動をとらえる視点
外界をとり込む
調整がくずれる
揺れ動く生命活動
外界とかかわり行動を拡げる
信号と行動体勢の分化拡大
信号系について
身ぶりサインから文字記号へ
信号操作の学習について
相互障害状況から相互輔生へ