活用事例 05

高校  体育

生徒達の「思考・判断」を促してくれるアプリです

山形県立山形中央高等学校 佐藤若教諭 


活用シーン

  • 対象学年・教科
    高等学校2年 男子9名・女子16名 合計25名
    保健体育
  • 対象活動
    バドミントン(球技:ネット型)/選択制授業/単元時間20時間
  • 事例テーマ
    「〈見比べレッスン〉を使って主体的・対話的で深い学びにチャレンジ」

「見比べレッスン」を使ってみて

まず、学校のタブレット整備状況をお教えいただけますか?

本校には45台のタブレットがありますが、本授業では「見比べレッスン」がインストールされている10台を使用し、バドミントン選択者25名が授業で活用しました。

「見比べレッスン」を使った授業の流れをお教えいただけますか?

単元20時間の中で「思考・判断」の「目標に応じたチームや自己の課題を設定すること」「取り組んできたチームや自己の目標と成果を検証し、課題を見直すこと」を学習する時間に使用しました。

  • 【6時間目】 前時までにドライブ、ドロップ、クリアー、スマッシュなど「作戦に応じて、緩急や高低をつけた変化のある打ち出し」について学習しています。本時は、なかなか身につけられない「ハイクリアー*1」に焦点を絞り、「遠くに飛ばすための自己の課題を見つける」ことを目標にしました。
    「見比べレッスン」の使用方法を説明し、動きの視点を示した上で、上手い生徒の動きを見本として撮影させ、その後2人組で練習している状況を撮影しました。生徒同士で見本と自分の動きを2画面で比較し、動きの違いについて話し合いながら課題を見つけ、設定しました。
    *1 ハイクリアー:コートの奥に向かって、高い軌道で飛んでいくフライト。自分の体勢を立て直す時間を稼ぐために使われる。
  • 【10時間目】 7~9時間目に「オープンスペースを作り出して攻める」、さらには「オープンスペースを守る」ための元の位置に戻る動き(シングルス)と陣形(ダブルス)など、「仲間とタイミングを合わせて、攻防をめぐる守備位置を理解しながら素早く動くこと」を学習しています。本時では「ダブルス」の「オープンスペースを埋めるための動き」を見つけることを目標としました。
    コートの後方または上方から、グループ内で行った簡易ルールでのゲームを撮影し、ペア同士でオープンスペースができてしまったケースを検証しました。学習したトップアンドバック*2、サイドバイサイド*3などの陣形での動きに限らず、相手の動きに合わせて変えるための課題を話し合ったり、教師の発問に答えたりしながらその内容を「見比べレッスン」のペン機能で書き込み、練習に取り組みました。
    *2 トップアンドバック:2人が前後に位置し、コートの前と後ろを分担する陣形。
    *3 サイドバイサイド:2人が左右に位置し、コートの右と左を分担する陣形。
  • 【15時間目】 「取り組んできたチームや自己の目標と成果を検証し、自分の課題を見直す」ことが目標です。リーグ戦(目的別シングルス、ダブルスゲーム)に向けて、あらかじめ自分の課題をグループ内で伝え、その課題を中心に撮影しました。ゲーム後は「オープンスペースを作り出すために前後左右に振り分ける」「サーブの後のポジショニング」など、これまで練習してきたことが改善されてきたかを確認しながら、それぞれの映像を検証しました。また、授業のまとめとして、課題を書き込んだものを使って、生徒が全体に向けて課題を発表する時間も設けました。

「見比べレッスン」の活用で、どんなメリットが生まれましたか?

  • 見本の動きと自分との比較ができます(シャトルを持つ動きの分析)
    速度を調整したり、一時停止したりしながら画面を見比べたことにより、「半身の姿勢になっていない」(肩を引いていない・両足が平行になっている)「肘が落ちている」「逆側の腕が下がっている」などの、体の使い方についての課題が明確になりました。
  • オープンスペースを埋める動きの課題が明確になります(シャトルを持たない動きの分析)
    2人の動きを全体で見ることにより、「どのような時にオープンスペースができるのか」を検証することができました。陣形をサイドバイサイドに固定しているため、「後方にオープンスペースが生まれ返球できない」「スペースを埋めるためのフットワークをどうするか」等の課題が明確になりました。
  • 課題の発表に活用できます
    「見比べレッスン」のペン機能を使って生徒が課題を書き込み、それをモニターに映して、全体に向けて自己の課題を発表しました。現行学習指導要領の課題(「学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」)として、「学習したことを相手にわかりやすく伝えること等に課題があるのではないかという指摘がある」ことが挙げられていますが、映像を使用して根拠を示しながら説明することにより、大変わかりやすく発表できたと思います。また、全体で共有できたこともよかったです。
  • 評価にも活用できます
    課題記入後はスクリーンショットにより保存させ、教員がデータを回収しました。生徒の課題意識と映像(技能の一部)がセットになっていることから、「目標に応じた自己の課題を設定」「取り組んできたチームや自己の目標と成果を検証し、課題を見直す」という「思考・判断」を指導・評価する際に、明確な材料として活用できると感じています。

「見比べレッスン」で役に立った機能はありますか?

  • 速度を変える(スローモーション)機能によって、上手い生徒の動きの流れやポイントを確認することができるのがいいですね。もう少し遅い速度にもできればさらに良いと感じます。
  • 2画面で比較することができるため、大変効果的です。
  • ペイント機能で動きのポイントを○で囲んだり、文字を書き込んだりできるので、課題が明確になります。

今後「見比べレッスン」をどのように使っていこうとお考えですか?
また、「見比べレッスン」に限らずタブレットの活用可能性についてお考えがあれば、お聞かせください。

今回報告した「バドミントン」以外にも、「見比べレッスン」を使って授業を行っています。「体育理論」(運動やスポーツの効果的な学習の仕方)では、教員が生徒の動作を分析したものを具体例として活用したり、専門学科である体育科の「スポーツ総合演習」では、生徒が自分の専門競技における動作分析を行い、そのデータを基にレポートを作成したりしています。
授業におけるタブレットの活用は、自分やペアの動きを正確に把握し、それをもとに生徒同士の具体的な話し合いや、教員との問い返しのやり取りをしながら、新たな課題を見つけることができるので、効果的なツールであると思います。また、運動が苦手な生徒でも、自分の動きに対して興味が湧いたり、もっと上手くなりたいというやる気につながったりするため、知的好奇心を高められるのではないかと感じます。
さらに効果的な使用法を考えていく上で、動きの角度を出す機能や、連続画面でフォームが確認できるような機能があればよいと思いますが、その分操作が複雑になってしまうかもしれません。
課題の書き込みをさせて感じたことは、スペースが小さく(使用したタブレットはiPad mini)、書き込みにくい面もあるため、テキストで文字入力ができればさらに明確なコメントを記入できるのではないかと思います。
また、タブレットで通信できれば、教員が生徒の課題を一目で確認したり、他の生徒の課題も共有したりできるだろうと考えています。ただし、その際には通信環境を整えることが課題になってくることも予想されます。

佐藤若教諭

見比べレッスン
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