WEB国語教室

リレー連載

ソーシャルメディアの社会学

第1回 ソーシャルメディアで磨かれる言葉の力
津田大介インタビュー

「ソーシャルメディアの社会学」連載開始にあたって、ツイッター(Twitter)をはじめとしたソーシャルメディアに関する数々の発言で注目を集める津田大介さんにお話を伺いました。ソーシャルメディアそのものから、教育との関わりまで、話題は広く及びました。

ソーシャルメディアと出会うまで

――津田さんのソーシャルメディアとの出会いまでを教えてください。学生時代はジャーナリスト志望だったそうですが、その頃は、「ソーシャル」ではない既存のメディアをどう見ていたのでしょうか。

津田氏(以下津田):中学生や高校生になると、社会の仕組みってどうなっているんだろう、なんで社会は変わらないんだろう、と考えますよね。でも、社会を動かす政治のことは、新聞やテレビといったメディアを通してしか知ることができませんでした。そんな中で特定のテーマに絞って取材するルポルタージュの存在を知り、物事をよく知ると問題はそんなに簡単に解決できるものじゃないということをルポルタージュから教えてもらったんです。ここから、問題の解決は簡単ではないと知ることが社会問題解決のきっかけになるんだと学びました。そして、取材して世の中に伝えるということにも興味を持ち始めたんです。そして、大学時代にインターネットという新しいテクノロジーに出会って魅了された。だから僕はオールドメディアもニューメディアもどっちも好きで、その結果として、テレビ・ニコニコ生放送[1]・ラジオ・新聞・雑誌・ツイッター・ユーストリーム(Ustream)[2]と、とにかくメディアを選ばずに、世の中にこんなことがあるんだよと伝えていくのが、今の自分の仕事になっているんだと思いますね。

――津田さんはその後、パソコンやインターネットと出会い、その分野のライターとして活躍される中で、ツイッターと出会ったわけですね。ツイッターと出会ったとき、どんなところに面白さを感じたのでしょうか。

津田:ツイッターを始めてから一週間ぐらいは、何が面白いのかわからなかったですよ。ただ、知り合いとプライベートな話をするチャットと比べたとき、チャットと同じような流れの速いおしゃべりを、パブリックな場でやっているのが新しいと思ったんですね。ツイッターは情報発信という点ではブログに似た特徴もあるので、ブログとチャットのいいとこ取りをしていて、加えてパブリックであるというところに可能性を感じました。それからですね、ツイッターにはまり始めたのは。自分が出席した会議のことをツイッターでつぶやくと、フォロワー[3]に広まって、数十秒後にはすぐに反応がある。この時間感覚は新しいなあと思いましたね。ブログだと、何か書いてもコメントが返ってくるまでには何分間かはかかります。フェイスブック(Facebook)も当初はミクシィ(mixi)やブログのコメント欄のように動きがあまりないものだったんですが、どんどんリアルタイムの方へとシフトしていきました。これは、ツイッターのリアルタイム性の面白さが影響しているんだと思います。

ソーシャルメディアのインパクト

――リアルタイムという点では、2ちゃんねるの実況[4]やニコニコ生放送も似ていますが、これらとツイッターとの違いはどこにあるのでしょうか。

津田:ある種のパブリックビューイングだという点では、やっていることはどれも同じです。いちばんの違いは、ツイッターの場合、パブリックビューイングが終わった後でも関係が続くことなんです。パブリックビューイングというものは、終わったら解散してしまい、その後その場にいた人とつながることはないんですが、ツイッターであれば話題になったトピックをきっかけに、その後も話や関係を深めていくことができます。面白いことを言ってる人がいるなあと思ってフォローすると、関係が継続する――そこがソーシャルメディアの何よりの特徴でしょうね。匿名か実名かに関係なく、IDに紐付いてその人の発言を追えるようになっているんです。

――ソーシャルメディアの津田さんなりの定義について教えていただけますか。

津田:広い意味では、お互いに双方向で情報をやり取りするメディア。狭い意味では、やり取りが社会に影響を与える、ソーシャルメディアの「ソーシャル」という部分が強調されるメディアですね。バラク・オバマが選挙資金を集めるために作ったSNS[5]も、支援者同士がつながるという点では、狭い意味でのソーシャルメディアだったと言えると思います。

学生とソーシャルメディア/教員とソーシャルメディア

――津田さんは今年から大学で教鞭を執られていますが、大学生のソーシャルメディアへの接し方やリテラシーについてどう感じられていますか。みんなすんなりと扱えるものなのでしょうか。

津田:個々人で大きく差がありますね。大学の演習ではトゥギャッター(Togetter)[6]でツイート(つぶやき)をまとめさせているんですが、こちらの意図をわかってまとめてくれる学生もいれば、トゥギャッター自体を知らない学生もいます。そもそもツイッターのアカウントを持っていない学生もいますしね。

――今の大学生は、どれぐらいの割合でツイッターをやっているのでしょうか。

津田:7~8割といったところですね。フェイスブックも同じぐらいです。ミクシィはそれより少ないですね。

――大学やツイッターで学生と接していて、何か感じるところはありますか。

津田:人によって意識の差が激しいです、ソーシャルメディアに関しては。大学で教えていて思うのは、この意識の差が僕の学生時代より大きくなっているんじゃないかということです。昔は有能な学生であっても情報を手に入れるにはカネかコネが必要で苦労を強いられたわけですが、今は簡単に情報を手に入れられるようになっています。ただ、その情報の入手方法を知っている「上澄み」のレベルの人たちと、それ以外の人たちとの差はものすごいものがある気がしますね。

――学校の教員がソーシャルメディアと接するにあたって、注意すべきことはありますか。

津田:教員がソーシャルメディアを使うのは、すごく難しいですよね実際。学校という場では教師と生徒という関係である以上、高校・中学校・小学校と下に行けば行くほど、上下関係というか立場の差が大きくなりますよね。その一方で教員も一人の人間であって、普通に食事をしたり何らかの心配事を抱えていたりするわけですが、ソーシャルメディアはこうした人間としての素(す)が出てしまうので、生徒になめられてしまう可能性が出てくる。教えている環境や内容によっても違ってくることでしょうし、ソーシャルメディアで一人の人間としての姿をさらけ出してしまうのがいいことなのか悪いことなのか、僕には何とも言えません。重要なのは、ソーシャルメディアでは、その人のパーソナリティが、全てではないにしても、何割かは明らかになってしまうものだということを分かった上で、使った方がいいということです。もちろん、教育の場でソーシャルメディアを取り上げるのであれば、生徒にもそれを教えた方がいいと思います。

――ソーシャルメディアが教育現場にも普及したとき、どんな影響をもたらすとお考えですか。

津田:去年、NHKの「課外授業ようこそ先輩」という番組に出て、母校の中学校で生徒たちにツイッターでつぶやいてもらいました。結果としてツイッターは、他人が考えていることへの気づきや、あの人に話しかけてみようというきっかけを、彼らに与えられたかなと思います。ソーシャルメディアで物事を一挙に解決するなんてことは、もちろんできません。ただ、現実世界で動くときのきっかけとしては、ソーシャルメディアはとても優秀なんです。教育現場でも、同じことが言えるのではないでしょうか。

ソーシャルメディアと「国語力」

――国語教育では、手紙や論理的なレポートの書き方といった、パブリックに情報を発信する力をどのように身に付けさせるかが課題となっています。お話を伺っていると、ソーシャルメディアは国語教育にも有用なのではないかと感じるのですが、どうでしょうか。

津田:個人的な話になりますが、高校時代「国語表現」の授業をとっていましたよ。ライターになったのは、「国語表現」で書いた文章を先生に評価をしてもらったことが大きく影響していますね。時事的なテーマが出されることもあれば、「今日はラブレターを書いてみよう」なんて言われることもあって、「国語表現」の授業は本当に毎回新鮮で面白かった。「憂鬱」の「鬱」を書けたら帰ってもいい、なんていうときもありましたね。熊倉先生というんですが、彼の授業がなかったら僕は今ジャーナリストになってなかったかもしれないです。大事な恩師の一人ですね。

――情報を発信する上では「国語力」が必要だと思うのですが、ソーシャルメディアがこの「国語力」を鍛えるのに役立つことはあるのでしょうか。

津田:この前猪瀬直樹さんとも話したんですが、ツイッターの140字という字数制限は「国語力」のいい訓練になります。140字の中で、起承転結を設けたり、伝えたい情報をきちんとまとめたりして、意味が伝わるように書く必要があるから。限られた字数の中で、不特定多数の人に向けてどうやって書いたら伝わりやすい表現になるか――こう考えることは、すごくいい日本語の訓練になると思いますね。僕自身も、イベントで話者が話していることを要約してツイッターで発信してきたことが、とてもよい勉強になりました。

――ツイッターは、文章表現を訓練するいい場になり得るということですね。

津田:ツイッターは巨大な大喜利みたいなものなんですよね。色々なお題が出されているときに、自分ならこう考えるよと発信していくわけです。この繰り返しが、「国語力」の強化につながっていくと思いますよ。

もしも津田大介が○○だったら

――もし津田さんが高校の教員になったとしたら、ソーシャルメディアは使いますか。

津田:うーん……、使うと思います。生徒にも教えるべきものだと思いますしね。その際、最低限伝えなくてはいけないのは、パブリックに情報を発信するとはどういうことなのかということ。それから、言葉遣いですね。面と向かって言われたら相手がムッとするようなことを言ってはいけない、全く知らない人にタメ口で話しかけてはいけない、おおやけにはできないこと、すべきでないことをつぶやいてはいけない――こういったリスクを教えた上で、合わせてメリットを教えていく必要があるでしょうね。

――では、もし津田さんが今この時代に高校生だったとしたら、ソーシャルメディアをどう使いますか。

津田:これはよく大学でも話すんですが、ソーシャルメディアを使って会いたい人に会いに行きます。大人は学生の頼みを断りづらいんですよ。断ると罪悪感に駆られてしまうんですね。昔は有名人や興味のある人に会うのは大変だったんですが、今はそういう人たちもソーシャルメディア上にいるので、直に連絡が取れます。こうして人と人の出会い方を変えたところが、ソーシャルメディアが起こした最も大きな革命だと僕は思っています。そして、会いたい人に会う上では、きちんと話ができるように知識や考えを蓄えておくことが重要です。単に会って話を聞くだけでは、二度目はありません。

ソーシャルメディアとどう向き合うか

――ソーシャルメディアってどうやって使ったらいいの? という素朴な疑問に対しては、どのように答えられますか。

津田:自分のやっていることや考えていることを発信するということに尽きると思いますね。昼飯にカレーライスを食べたという情報であっても、その人に興味をもっている人にとっては価値のある情報なんですよ。自分が好きな人の情報は、どんなくだらないものでもうれしいんです。パブリックに発信した情報というのは、自分がそれを意味づけしなくても、他人が意味や価値を見出してくれます。「こんなこと書いてもしょうがないな」と自己規制する必要はないんです。

――ツイッターやフェイスブックをはじめとした様々なサービスのうち、どれが自分に合ってるか分からない、という質問に対しては、どう答えられますか。

津田:フェイスブックはホームパーティのようなもので、仲のよい人同士で親交を深めるためのサービスでしょうね。それに対してツイッターは、パブリックな空間で知らない人とやり取りを深めていったり、知らない情報を得たりする場であって、様々な人と交流する立食パーティのようなものです。既知の人とのつながりを深めたいのか、未知の人とのつながりを得たいのか、それによって使い分けることになると思います。

ソーシャルメディアの未来

――最後に、ソーシャルメディアの今後について、お考えを聞かせていただけますか。

津田:『動員の革命』[7]でクラウドファンディング[8]を取り上げましたが、こうしたサービスによって、物事が実現するまでの速度が上がっていくと思います。主体的に現実を動かしていく速度をすごく上げてくれるのが、ソーシャルメディアなんです。問題を抱えていないわけではないですが、ソーシャルメディアが人間関係や物事の実現可能性を拡張していってくれたらいいなと思いますね。

(2012年4月30日 慶應義塾大学にて)
聞き手・構成=大修館書店編集部

著者プロフィール

津田 大介 (つだ だいすけ)

ジャーナリスト、メディア・アクティビスト。早稲田大学大学院政治学研究科非常勤講師。関西大学総合情報学部特任教授。1973年東京都生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。『Twitter社会論』(洋泉社新書y)、『情報の呼吸法』(朝日出版社)、『動員の革命』(中公新書ラクレ)など著書多数。2011年9月より週刊メールマガジン「津田大介の『メディアの現場』」の配信を開始。

《注》

  • [1] ニコニコ生放送
    ニコニコ動画が提供する、動画を生放送で配信するサービス。
  • [2] ユーストリーム(Ustream)
    生放送での配信が可能な動画共有サービス。
  • [3] フォロワー
    ツイッターにおいて、自分のアカウントをフォローしているユーザーのこと。
  • [4] 2ちゃんねるの実況
    2ちゃんねるには、テレビ番組などの感想をリアルタイムに書き込むことができる掲示板がある。
  • [5] バラク・オバマが選挙資金を集めるために作ったSNS
    オバマ陣営は選挙戦スタート時に「My.BarackObama.com」というサイトを立ち上げ、1ドルという少額からの献金を可能として、資金を集めた。SNSは、ソーシャル・ネットワーキング・サービスの略称で、人と人とのコミュニケーションを促進するサイトやサービスのこと。
  • [6] トゥギャッタ―(Togetter)
    ツイッター上でのつぶやきを、話題ごとにまとめるサービス。
  • [7] 『動員の革命』
    4月に刊行されたばかりの、津田氏の最新刊。
  • [8] クラウドファンディング(crowdfunding)
    プロジェクト実現に必要な資金を、インターネットを通じて一般大衆(crowd)から集めるサービス。
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