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あしたの授業研究/バックナンバー

目から耳から訴える家庭科の授業(後編)
宮城県立名取北高等学校 下村由夏

  3.目や耳に訴える実践例

  [2]保育分野
◎さて,何の音?
まず,「胎内音」の入ったテープやCDを用意する。私が使っているのは,「Sleep gently in the Womb」というアルバムで,母体の大動脈血流音や新生児安静音などが収録されていて,こうした胎内音の途中から「トロイメライ」や「タイスの瞑想曲」に移っていくというスタイルになっている。「胎内音」はこうした子守歌のアルバムなどに収録され,出回っている。
さて,保育分野の第一回目の授業で,まず,「さあ,目をつぶって。何の音でしょう。」と呼びかける。「グワーン」,「グワーン」という少しくぐもった音が教室に響き渡る。すると,「心臓の音」,「音がこもってる。」と次々声がでて,「保育だもんな。お母さんのおなかだよ。」という結論へ。この授業では,日頃からの雰囲気づくりが大切である。フリートークが飛び出しやすい,なごやかさが多少必要かも知れない。「みんな10か月,聴いてたんだよ。」と言うと,「俺,憶えてる。」などと笑いをとる男子生徒がいる一方で,女子生徒はやや神妙な面持ち。「お母さんの規則正しい心音や血流音を聞いて,赤ちゃんは安心するんだって。」と話をして,教科書の胎児と母体の変化の成長過程の図へと,流れていく。ビデオ教材などは生物や保健の授業などで既に鑑賞していて,実は食傷気味ということもあるので,音だけというのは,耳をすまして集中するせいか,案外,効果的だと感じている。
◎だっこ,うまいね。
これは,「胎内音」を聴いた次の時間の授業である。保育人形を用意する。医療用の新生児人形はおすすめである。肌の感触や首の座り,重心などリアルで,だっこさせると生徒は戸惑い驚いて,へんにふざけた雰囲気にならない。事前に「連れてくるから,手をよく洗っておいてね。」と思わせぶりな予告しておくのもポイントである。これは実は肌のシリコンを汚さないためであるが,次の時間,おくるみにくるんだ赤ちゃんを大事そうに抱っこして教室に入る。新生児は首が座っていないので,腕で必ず支えるように,とだっこのポイントを説明する。列の先頭の生徒にそっと,抱かせると「やっぱり人形だ。」と言いながらも,しっとりとした感触と意外な重さ(実際の新生児の平均体重と同じ3,000g)にびっくりする。そして,腕を添えないと首が反り返ってしまい,あわてて,正しくだっこしようとする。順番にだっこしていくとお互いの意外な反応に皆,興味津々である。また,この人形には「小泉門」,「大泉門」も再現されているので,実際に触って確かめることができる。この後に入る教科書の「新生児の特徴」について,より理解が深まる(■1)。

[3]被服分野
◎あっ,光ってる。
まず,用意するのはブラックライトである。これは教材を専門に扱う企業などから入手できる。10Wで照明装置がついて4,000~5,000円くらい,ブラックライトの蛍光管だけなら,DIYショップで20Wで2,500円くらいである。あまり小さいと光量も少ないので,本校では電気スタンドに20Wのブラックライトをつけて使用している。
もし,私服の高校であれば,授業当日なるべく白のポロシャツやブラウス,Yシャツを着てくるように指示しておく。また,家で使っている洗濯用洗剤の成分の表示をノートに写してくるように宿題を出しておく。実施するのは,しっかり遮光できる視聴覚室がよい。冬場なら,制服の上着を脱いで席から立ってもらい,暗幕を閉める。移動しながらブラックライトで照らしていく。衣類に残った蛍光増白剤が紫外線に反応し,あちこちでボワッと紫の光が浮かび上がる。なぜ,光る人と光らない人がいるのか。ここで暗幕を開けて,黒板に各自の洗濯洗剤の成分を書き出していってもらう。
この後,教科書を使って洗剤成分について,説明する。実際の成分表示を見てもらうために,いろいろな洗濯洗剤のサンプルを用意しておくのもいい。同じように見える洗濯洗剤でも,成分に違いがあることを知り,品質表示をよく見て買うのは,食品だけではないことを理解する。

[4]家庭経済分野
◎えっ,お札なの?
用意するのは,日本銀行仙台支店でいただいた「銀行券裁断片」である。また,祖母がくれた昔の貨幣を時代ごとに並べて,名称などを調べ,ボードに貼ったものも用意した(■2)。
今まで,パソコンによるクレジットの計算など,いろいろ具体性をもたせた授業をやってきていたが,今回,「銀行券裁断片」をいただいたことをきっかけに,身近すぎて,あまり意識しないで使っているであろうお金そのものについて,とりあげてみることにした。
まず,「何でしょう。」と言って,サンプル管に詰めた「銀行券断裁片」を回して見てもらう。お札だということは,すぐにわかるが,あまりの細かさに驚く一方で,ジグソーパズルのように並べたら,お札と換えてもらえるんじゃないかという意見が出てくるのがおもしろい。また,昔の貨幣のボードも好評でしげしげと見ている。昭和のコインの一部は今も使えると話すと驚かれる。この後で「知っているようで知らない お金にまつわる力だめし」(■3)に挑戦してもらう。
今回,授業のために調べていく過程で,紙幣は印刷局で作られ,日本銀行で発行,一方,貨幣は造幣局で作られ,政府が発行していることを知った。また,リサイクルについて,貨幣は溶かして再び貨幣の原料となり,紙幣は一部,ダンボールや建材に転用されていると日本銀行で伺った。「銀行券裁断片」は家庭経済の導入に利用しているが,リサイクルの単元でも生かせそうである。

  4.これからのこと

  現状に満足することなく,生徒の反応を見ながら改良を加え,つねに変化していきたい。もうひとつは,より効果をあげるために他教科との関連についても,もっと勉強したいと思っている。例えば,化学繊維や洗剤なら「化学」ではどう扱われているかというように。また,その単元が他教科より,こちらの授業が先か後かによっても扱い方を考える必要があるので,担当者との連携も深めたいと考えている。場合によってはコラボレーションするのもおもしろいと思っている。
また,これまで集めた「もの」をもっと効果的に活用するために,「もの」の周辺について,私自身がもっと掘り下げて勉強する必要があると感じている。「あー,おもしろかった。」だけでは終わらせず,その一歩先まで考えてもらえるような授業を作っていければと思っている。
最後に,この紙面をお借りして,いろいろご親切に対応していただいた日本銀行仙台支店の掘田千栄子氏と竹内良子氏に感謝申し上げます。

<問い合わせ先>
●新生児人形(コーケンベビー)
 株式会社 高研
 TEL 03(3950)6600
 東京都豊島区目白3-14-3

●銀行券裁断片
基本的に日本銀行の見学者に配布している。詳細は日本銀行本支店にお問い合わせください。
日本銀行本店ホームページ http://www.boj.or.jp/


1新生児人形を抱く
2銀行券裁断片と貨幣の見本
3知っているようで知らない¥お金にまつわる力だめし¥



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