高等学校学習指導要領解説・保健体育(抜粋)
第3章 各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い
第1節 体育及び保健に関する指導計画の作成と内容の取扱い
1 体 育
(略)
2 保 健
「保健」の学習指導を系統的かつ効果的に推進するためには,あらかじめ学習指導の予定をたて,年間にわたる見通しや指導の方向,基本的観点を明確にしておく必要がある。この全体的な見通しや予定等を示すために作成する年間計画は,月間及び毎時間の学習指導に不可欠な指針となるべきものである。したがって,年間にわたる学習指導計画の作成に当たっては,学習指導要領に基づきながら,地域,学校及び生徒の実態を考慮して,これに即応するように計画を作成することが必要である。
「保健」の指導計画の作成については,学習指導要領第2章第6節保健体育の第3款「各科目にわたる指導計画の作成と内容の取扱い」にその基本が示されているが,特に次の事項に十分配慮し,実際に即した指導計画を作成する必要がある。
(1)学校における体育・健康に関する指導との関連
前記「1体育」で述べたように,指導計画の作成に当たっては,第1章総則第1款の3に示す「学校における体育・健康に関する指導」の趣旨を生かし,特に,特別活動,総合的な学習の時間及び運動部の活動などとの関連を図り,日常生活における体育・健康に関する活動が適切かつ継続的に実践できるように留意することとした。
とりわけ,心の健康,薬物乱用,生活習慣病,感染症など深刻化している生徒の心身の健康課題に適切に対応するために,学校の全体計画を作成し,家庭や地域社会と連携しながら,計画的,継続的に指導を進める必要がある。
(2)保健体育科の目標との関連
保健体育科の目標は,「保健」と「体育」の具体的な目標として,心と体を一体的にとらえ,「生涯にわたって計画的に運動に親しむ資質や能力の育成」,「健康の保持増進のための実践力の育成」及び「体力の向上」を掲げ,それらが相互に密接な関連をもち,究極的な目標である「明るく豊かで活力ある生活を営む態度」を育てることを目指している。「保健」としては,自らの役割を十分果たすとともに,保健体育科の目標の達成のために適切に機能するように,年間指導計画を作成する必要がある。
(3)保健の標準単位数と履修学年
|
(3)「保健」は,原則として入学年次及びその次の年次の2か年にわたり履修させるものとする。
|
|
「保健」の標準単位数は,従前と同様2単位となっている。
「保健」の年間指導計画については,課程の種別にかかわらず,原則として入学年次及びその次の年次の2か年にわたり履修させるよう作成しなければならない。
「保健」については,新たに小学校第3,4学年に保健領域が設定されたことにより,小学校第3学年から中学校第3学年まで毎学年学習することとなっている。高等学校では,これに継続して学習させることによって,学習の効果を上げることをねらったものである。
なお,「入学年次及びその次の年次の2か年にわたり履修する」こととしたのは,高等学校においてもできるだけ長い期間継続して学習し,健康や安全についての興味・関心や意欲を持続させ,生涯にわたって健康で安全な生活を送るための基礎となるよう配慮したものである。
(4)指導内容の構成
科目「保健」の指導内容は,学習指導要領において,「現代社会と健康」,「生涯を通じる健康」,「社会生活と健康」の3項目で構成されており,それぞれの項目について,二つ~五つの内容が示されている。
本書においては,その内容についてさらに(ア)~(エ)として二つ~四つに分けて解説した。これらの内容については,学習指導要領作成の際に検討したものであり,指導計画の作成に当たって,基にすべき内容であるが,必ずしも指導の順序や内容の区分・独立を示しているものではなく,学校や生徒の実態に即し,弾力的に取り扱うことが必要である。
3 体育及び保健
| 2 各科目の指導に当たっては,その特質を踏まえ,必要に応じて,コンピュータや情報通信ネットワークなどを適切に活用し,学習の効果を高めるよう配慮するものとする。
|
|
我が国の情報化が進展し,企業活動,研究活動,教養文化活動,娯楽の世界まで,社会のあらゆる分野に情報化が浸透し,学校においても情報教育の充実が図られつつある。そのような状況の中で,高等学校においては,小学校及び中学校のコンピュータの扱い方や情報活用に関する学習並びに教科「情報」における学習の基礎の上に立って,必要に応じて各教科でのコンピュータや情報通信ネットワークなどの活用を一層推進することが求められている。保健体育においても,各科目の特質を踏まえ,必要に応じて適切に活用し,学習の効果を高めるよう配慮することとした。
例えば,(略)保健においては,課題学習等における情報通信ネットワーク等の活用や,学習に関連する統計図表等の作成などが考えられる。(略)
第2節 学校における体育・健康に関する指導
年間計画を作成するに当たっては,学習指導要領第1章総則第1款の3「学校における体育・健康に関する指導」との関連を十分に考慮することが重要である。
| 3 学校における体育・健康に関する指導は,学校の教育活動全体を通じて適切に行うものとする。特に,体力の向上及び心身の健康の保持増進に関する指導については,「体育」及び「保健」の時間はもとより,特別活動などにおいてもそれぞれの特質に応じて適切に行うよう努めることとする。また,それらの指導を通して,家庭や地域社会との連携を図りながら,日常生活において適切な体育・健康に関する活動の実践を促し,生涯を通じて健康・安全で活力ある生活を送るための基礎が培われるよう配慮しなければならない。
|
|
これからの社会を生きる生徒に,生涯にわたり心身ともに健康で活力ある生活を送るための基礎的な健康や体力をはぐくむことは極めて大切である。今回の改訂では,「体育に関する指導」を「体育・健康に関する指導」に改めている。これは,体力の向上はもとより,心の健康,薬物乱用,生活習慣病の兆候等の健康に関する新たな現代的課題に適切に対応するなど心身の健康に関する指導をより充実する観点から,体育・健康に関する指導としたものである。
体育・健康に関する指導は,健康・安全で活力ある生活を営むために必要な資質や能力を育て,心身の調和的な発達を図ることをねらいとするものである。すなわち,生涯にわたって運動やスポーツを豊かに実践していくことと体力の向上を重視し,生徒が自ら進んで運動に親しむ資質や能力を身に付け,心身を鍛えることができるようにするとともに,個人生活や社会生活における健康・安全に関する知識の理解や活動を通じて自らの健康を適切に管理し,改善していく資質や能力を育成し,生涯にわたり明るく豊かで活力ある生活を営むための基礎づくりを目指したものである。
したがって,その指導においては,体つくり運動や各種のスポーツ活動はもとより,保健指導,安全指導,給食指導などの健康に関する指導が重視されなければならない。このような体育・健康に関する指導は,「体育」及び「保健」の時間だけでなく,関連の教科,特別活動や総合的な学習の時間のほか,生徒が自発的・自主的に参加する運動部の活動なども含めた学校の教育活動全体を通じて適切に行うことによって,その一層の充実を図ることができる。
特に,体力の向上及び心身の健康の保持増進に関する指導については,保健体育科の指導の充実を図ることはもとより,各教科・科目,特別活動におけるホームルーム活動の健康や安全に関する指導,生徒会活動,学校行事の健康安全・体育的行事などにおける体力の向上や健康・安全にかかわる諸活動をその特質に応じて積極的に行うことによって,その充実を図ることが大切である。各学校において,こうした指導を効果的に進めるためには,地域や学校の実態及び生徒の体力や健康状態等を的確に把握し,それにふさわしい学校の全体計画を作成し,計画的,継続的に指導する必要がある。
また,体力の向上や心身の健康の保持増進に関する指導を通して,学校生活はもとより,家庭や地域社会における日常生活においても,自ら進んで運動を適切に実践する習慣を形成し,生涯を通じて運動に親しむための基礎を培うとともに,生徒が積極的に心身の健康を保持増進するための資質や能力を身に付け,生涯を通じて健康・安全で活力ある生活を送るための基礎が培われるよう配慮することが大切である。
なお,高等学校にあっては,教科担任制を原則としているために,ともすれば体育・健康に関する指導が保健体育科担当の教員に任されてしまうおそれがある。しかし,体育・健康に関する指導は,学校の教育活動全体を通じて適切に行われるべきものであり,その効果を上げるためには,保健体育科担当の教員だけでなく,全教職員の理解と協力が得られるよう,学校の実態に応じて指導体制の工夫改善に努めるなど,組織的に進めていくことが大切である。