4 歴史社会言語学入門

社会から読み解くことばの移り変わり

内容

歴史的視点でとらえる新しい社会言語学

社会が時間と共に変化するのに伴ってことばがどのように変容したのか、またそのような変化を引き起こす「見えざる手」はどのようなものなのかを解明しようとする「歴史社会言語学」の本邦初の概説書。日欧の第一線の研究者が、日本語、英語、ドイツ語等の興味深い事例を挙げながらわかりやすく解説する。

目次

はしがき

◆第1部 序論

第1章 歴史社会言語学の基礎知識――渋谷勝己・家入葉子・高田博行

1.「歴史社会言語学」とはどんな分野なのか
 1.1 社会言語学の問題のありか
 1.2 社会言語学が成立した時期
 1.3 社会言語学の下位分野
 1.4 歴史社会言語学への展開
2.言語変種
 2.1 言語変種とは
 2.2 バリエーションとは
 2.3 方言とスタイル
2.3.1 方言/2.3.2 スタイル
 2.4 歴史社会言語学と言語変種
3.言語接触
 3.1 言語接触をめぐる伝統的な研究と歴史社会言語学の視点
 3.2 言語接触の実際と分析の難しさ
 3.3 言語接触に関わる社会と人々の意識
 3.4 ピジンとクレオール
 3.5 二言語使用とコード切り替え
4.言語計画
 4.1 言語計画とは
 4.2 言語計画の主体
 4.3 言語計画のモデル
 4.4 ドイツの造語による語彙拡充
 4.5 明治以降の日本における言語計画
5.本書の構成

第2章 文献と言語変種
     文献に残されたことばの多様性が意味するところ――金水 敏

1.本章の目標
2.各時代の文献の特徴
3.表記の日本化と文語の成立
4.口頭語への接近
 4.1 音声パフォーマンスのテキスト化
 4.2 宗教的テキスト
 4.3 テキストの大衆化・娯楽化
 4.4 言文一致・標準語普及運動
 4.5 テキストのIT 化
5.まとめと総論

◆第2部 言語変種

第3章 下からの言語史
      19世紀ドイツの「庶民」のことばを中心にして――シュテファン・エルスパス[佐藤 恵 訳]

1.新たな言語史記述のアプローチ
2.「下からの言語史」の基本思想と目的
3.ケーススタディ:「下から見た」19世紀のドイツ語史
4.展望

第4章 山東京伝の作品に見るスタイル切り替え
     音便形・非音便形を事例に――渋谷勝己

1.はじめに
2.山東京伝の使用した書きことば
 2.1 山東京伝の言語的背景
 2.2 スタイル切り替えが観察される言語事象
 2.3 スタイルの実態:五段動詞の連用形を事例に
2.3.1 山東京伝の使用した連用形/2.3.2 洒落本/2.3.3 読本/2.3.4 黄表紙および合巻/2.3.5 複合格助詞
3.山東京伝のスタイル切り替えのメカニズム
4.山東京伝のスタイル能力
 4.1 スタイル能力とは
 4.2 スタイル能力のモデル
5.スタイルの習得
6.まとめ:スタイルと歴史社会言語学

◆第3部 言語接触

第5章 中国語と日本語の接触がもたらしたもの
     7~8世紀の事例に基づいて――乾 善彦

1.中国語との出会い
2.漢文訓読
3.語彙面における言語接触
 3.1 正倉院文書における漢語の処理
 3.2 続日本紀宣命と漢語
4.語法面における言語接触
 4.1 正倉院文書と訓読
4.1.1 日用文書の文法/4.1.2 宣命書き文書の「ことば」/4.1.3 正倉院仮名文書と漢文訓読
 4.2 古事記の文章とことば
4.2.1 古事記と漢文訓読/4.2.2 古事記仮名書部分のことば
5.日本語と漢文訓読の親和性

第6章 15世紀の英語とフランス語の接触
     キャクストンの翻訳を通して――家入葉子・内田充美

1.序論
2.多言語社会における多言語使用者
 2.1 言語接触の担い手としての翻訳者
 2.2 キャクストンの翻訳とその社会的意味
3.『パリスとヴィエンヌ』に見るキャクストンの語彙
 3.1 「名誉」と「騎士道」
 3.2 形容詞と抽象名詞
 3.3 考察
4.『パリスとヴィエンヌ』に見るキャクストンの統語
 4.1 pray に続く表現
 4.2 any の使用
 4.3 考察
5.結論

第7章 多言語接触の歴史社会言語学
     小笠原諸島の場合――ダニエル・ロング

1.はじめに:小笠原という言語社会
2.接触によって生み出された小笠原の言語変種
3.音変化
4.意味変化
5.使用領域の変化
6.文法変化
7.意味領域と単語形式のずれによって生じた特徴
8.1840年の単語リストから何が分かるか
9.なぜハワイ語が動植物の名称に残ったか
10.なぜ19世紀の小笠原ピジンで英語が上層言語となったか
11.なぜ英語の細かい方言的特徴が残ったか
12.なぜバイリンガリズムに止まらず、混合言語が形成されたか
13.なぜ小笠原混合言語の基盤言語は英語ではなくて日本語か
 13.1 MLT が起こりやすい環境
 13.2 第1段階:若年層の二言語使用とコードスイッチング
 13.3 第2段階:単語の借用
 13.4 第3段階:アイデンティティを保持した安定バイリンガリズム
 13.5 第4段階:二言語の役割の明確化
 13.6 マトリックス言語交代が完成した言語状況
14.おわりに:言語の圧力鍋

◆第4部 言語計画

第8章 近代国民国家の形成と戦前の言語計画――山東 功

1.日本の言語計画
2.明治期の国語施策と言語計画
 2.1 日本における言語計画の流れ
 2.2 官制整備と国語施策
 2.3 国語施策と国語学・国語教育
 2.4 国語調査委員会
3.大正期・昭和戦前期の国語施策と言語計画
 3.1 臨時国語調査会
 3.2 官制国語審議会
4.国語施策の行方と言語計画

第9章 19世紀の学校教育におけるドイツ語文法
      ドゥーデン文法(1935年)にまで受け継がれたもの――高田博行

1.3つの文法:規範、論理、歴史
2.アーデルング(1781年)に至る規範文法
3.ベッカー(1827/29年)による論理訓練のための文法
4.バウアー(1850年)による折衷主義的文法の成功
5.バウアー=ドゥーデン(1881年)からドゥーデン(1935年)へ
6.文法のなかのナショナリズム

第10章 英語における「言語計画」とは?
      規範化に向かった時代(18~19世紀)―――池田 真

1.言語計画とは
2.英語史における言語計画
3.規範文法とは
4.規範文法の誕生
5.規範文法の普及
6.現代に残る規範意識
7.歴史社会言語学的モデルの構築

参照文献
事項索引
人名索引
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