生きる力をつちかう言葉

言語的マイノリティーが<声を持つ>ために

生きる力をつちかう言葉
著者 田中望 編著
春原憲一郎 編著
山田泉 編著
ジャンル 書籍 > 日本語・日本文学・日本語教育・国語教育 > 日本語教育
出版年月日 2012/03/01
ISBN 9784469213362
判型・ページ数 四六・256ページ
定価 1,980円(本体1,800円+税10%)

内容

異質な他者を尊重する社会の実現を目指して

言語的マイノリティーという境遇ゆえに言葉との苦闘を余儀なくされた人々。彼らが社会の底流に横たわる見えない壁と向き合いながら、自らの言葉や文字を手にすることを通して、異質な他者を尊重し、多様性が生きるようなコミュニティー実現に向けてどのように歩んできたかを、当事者と関係者へのインタビューによって探る。

目次

まえがき

奪われた文字とコトバを奪い返す[髙野雅夫]

髙野さんとの出会い/満洲での底辺生活/戦争孤児となって引き揚げ/博多での野良犬のような暮らしと戦友ゴンチの死/山谷のハラボジに名前の書き方を教わる/人間になる原点をもたらしてくれたハラボジの死/個人的な復讐の念から社会的関心への必然の展開/夜間中学入学/人生観を一変させた見城先生との出会い/夜間中学廃止反対を訴え、映画をつくって全国行脚/「声を持つ」ことを目指した韓国の識字活動との出会い/行政の介入による文解教育の変容/「自分の文字とコトバを持っているか」という問いかけ/行政による夜間中学つぶしの動き/生理という原点から、心理、道理へ/奪われたコトバを奪い返すための闘い


越境者にとっての母語と読み書き[徐京植]

言葉を操る力の本質をどこに求めるか/オモニにとっての文字/識字問題の背後に潜む日韓の社会史/子どもたちが得た教育が母にもたらしたアンビバレントな思い/「教育がない」ことの強さと辛さ/オモニの豊穣な語りの世界を支えた草の根ネットワーク/内奥の声をどこまですくいとり描き出せるのか/逆境がもたらした人との出会い、言葉の獲得/日本語を日本人の枠の外へ広げる/ネーションの枠を超えた言語教育を


弱さがもたらす豊かなコミュニティー
――浦河べてるの家の降りていく挑戦[向谷地生良・川村敏明]

新米ソーシャルワーカーとして人間関係で苦闘/べてるの家設立、自然体で暮らせるコミュニティーを目指す/人助けは「人を助けられないこと」を受け容れるところから/弱さや問題をかかえた人を生かす中に豊かさが育まれる/幻覚・妄想を大切に、偏見差別大歓迎、話せる仲間がいて世界が変わる/専門性を生かすために専門性を脱ぎ捨てる/患者が自らの症状と処方を探る当事者研究/弱さの教育、苦労の教育の必要性


聴覚障害者にとっての真の言葉とは[上農正剛]

マイノリティーが「声を持つ」とは/聞こえない子どもたちをとりまく状況と医療の問題/機能不全に陥った聾教育/日本手話を基盤に言語能力の育成を/音声を通さない概念・思考形成の可能性/絵本で育む言語能力/子どもたちの感性を読み解きながら書記言語の習得を/書記日本語のための文法を、手話をベースにどう捉えるか/手話通訳にはらまれる問題/分節化が生み出す差別の構造/差別の構造を問い返す方法/日本の教育のあり方/「ろう文化宣言」をどう受け止めるか/同化圧力をはね返して多様性を大切にするには/表面的な効率を求めて陥った教育不全を打破するには


[鼎談]「自分の声を持つ」ということ[田中望・春原憲一郎・山田泉]

言語的マイノリティーが「声を持つ」とは/マジョリティーへの同化を超えて/自分を縛っている文化からの解放/自らの生理から発する言葉と見方をつちかう/個々人の競争の場から皆の共創の場への転換/場の空気に流されないユーモア感覚


あとがき

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