モバイルコミュニケーション

携帯電話の会話分析

内容

携帯がコミュニケーション・スタイルを変えた

「どうして『今どこ?』と聞くのか」「ケータイを使った道案内の仕方は?」「途中で切れたらどうするか」「若者の携帯メールの実態はどうなっているか?」など、携帯電話の出現と進化にともない、変化し続けるコミュニケーション・スタイルを、実際に交わされた会話を分析することで解明していく。

目次

はじめに
データで使用されている記号一覧

序 モバイルコミュニケーションの課題

 1.本書の構成
 2.エスノメソドロジーと会話分析
 3.電話の会話分析のプレリュード
  3.1. サックスの電話の分析
  3.2. シェグロフの電話の分析
 4.会話の仕組み
  4.1. 隣接対
  4.2. 会話の順番取りシステム
 5.遠い声としての携帯電話と人々との関係
 6.「携帯する」コミュニケーション
 7.モバイルコミュニケーションの課題――時間と空間の組織化

第1章 電話の文化史

 1.はじめに
 2.電話のボディ・ポリティクス
 3.イメージの軽量化――モダンなライフスタイルと電話
 4.国づくりの道具から私有・携帯されるコミュニケーション・ツールへ
 5.コミュニケーションのデザイン戦略

第2章 モバイルコミュニケーションの現在

 1.はじめに
 2.パーソナル・コミュニケーション・メディアとしてのケータイ
  2.1. ポケベルからケータイへ――パーソナル・コミュニケーション・メディアの系譜
  2.2. メル友、出会い系、SNS
 3.多様化するモバイルコミュニケーション
  3.1. 情報娯楽(インフォテイメント)系
  3.2. 消費行動系
  3.3. 監視管理系
 4.おわりに

第3章 関係の中の電話/電話の中の関係

 1.はじめに
 2.用件の終了/電話の終了
 3.トラブルに対する助言/助言のトラブル

第4章 名乗りのない名乗り――携帯電話における会話の始まり

 1.携帯電話使用における三つの特徴
 2.携帯電話での会話の開始部分
  2.1. もしもし+名前を呼ぶことによる呼びかけ
  2.2. 最初の順番での“もしもーし”という発話デザイン
  2.3. 2番目の順番での話題の導入
 3.相互認識の達成は必要ないのか?
 4.相互認識過程の簡略化と親しさ――家族との会話と比較しながら
 5.携帯電話で親しさが示される三つの仕方
  5.1. 呼びかける
  5.2. “もしもーし”
  5.3. 共鳴させる

第5章 「電波が悪い」状況下での会話

 1.はじめに
 2.チャンネルが不安定であるということ――「電波が悪い」
 3.「電波が悪い」ことについての連鎖の組織
 4.「用件」連鎖の中断と再構築
 5.「電波が悪い」ことをトピック化すること
 6.おわりに

第6章 居場所をめぐるやりとり――ユビキタス性のコミュニケーション

 1.はじめに
 2.居場所を特定する会話
 3.居場所以上のやりとり
 4.状況説明という応じ方
 5.導入の連鎖
 6.会話の開始
 7.導入の連鎖の表われ方
 8.用件のない導入
 9.おわりに

第7章 携帯メール――「親しさ」にかかわるメディア

 1.はじめに
 2.携帯メールと「親しさ」
  2.1. 携帯電話における「親しさ」
  2.2. 携帯メールに表れる「親しさ」
  2.3. 「やりとり」としての意味――「書くこと」の相互性
 3.実践としてのメール
  3.1. 連鎖という考え方
  3.2. 連鎖による「資格」の成立
 4.メールにおける「親しさ」の達成
  4.1. 「親しさ」のいろいろ
  4.2. メールにおける「親しさ」
 5.メールにおける関係性の維持
  5.1. やりとりを通じて維持される関係性
  5.2. 連絡手段の選択
  5.3. 「電話がかかってこない」状況における関係性の維持
  5.4. メールにおける関係性の維持
 6.まとめ

第8章 「他者がいる」状況下での電話

 1.ベルが鳴り、そしてあなたは……――携帯電話と参与枠組の揺らぎ
 2.参与枠組と共在
 3.参与枠組の揺らぎとその修復(1)――参与枠組の分離と再結合
 4.参与枠組の揺らぎとその修復(2)――二つの参与枠組の同時維持
 5.文脈としての参与枠組/参与枠組のもつ文脈性

第9章 携帯電話を用いた道案内の分析

 1.はじめに
 2.分析の視点
 3.間欠的移動を伴った事例
  3.1. 「とりあえず」の待ち合わせ
  3.2. 居場所を特定する困難
  3.3. 場所を定式化する作法――シェグロフの考察
  3.4. 場所の特定の作業――相手の場所の分析と準拠点の設定
  3.5. 移動に志向した場所の定式化のデザイン
  3.6. どのように移動するのかの決定――互いが出会うことへの志向
 4.オンライン移動を伴った事例――方向指示を受けながらの移動
  4.1. 明示的な相互確認を欠いた移動の相互承認
  4.2. 明示的な相互確認の欠如が招くトラブル
  4.3. オンライン移動における方向指示の理解
 5.まとめ

第10章 リモートインストラクション――救急救命指示とヘルプデスクの分析

 1.はじめに
 2.「携帯電話」によることばを用いたリモートインストラクション
 3.「携帯電話」を用いた心肺蘇生の遠隔実験
  3.1. 患者の位置の問題
  3.2. 右側と左側――ことばと身体
  3.3. ことばをとおした身体と空間の組織化
  3.4. 指示と作業が異なる場合
 4.「携帯電話」を用いたヘルプデスクへの問い合わせ――いかにして正確な場所を伝えるのか
 5.おわりに――道具としての「携帯電話」

第11章 モバイルコミュニケーションの未来

 1.はじめに
 2.デュアルエコロジー
 3.手振りのインタラクションが可能な共有環境
  3.1. 手振りの有無とコミュニケーション
  3.2. 撮影角度とコミュニケーション
 4.モバイルコミュニケーションの未来
 5.おわりに

データについて
参考文献
索 引

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