3 歴史語用論入門

過去のコミュニケーションを復元する

3 歴史語用論入門
著者 高田博行 編著
椎名美智 編著
小野寺典子 編著
ジャンル 書籍 > 言語・言語学 > 各論
大学テキスト > 言語学・コミュニケーション学 > 言語学
シリーズ シリーズ・言語学フロンティア
出版年月日 2011/04/01
ISBN 9784469213317
判型・ページ数 A5・256ページ
定価 2,310円(本体2,100円+税10%)

内容

新たなパラダイムが切り拓く語用論の可能性

歴史語用論は、文字資料を基に、過去の発話の意味だけでなく、音声も含む語用論的内容を探る新たな研究分野。語用論研究に時間軸を導入して活発な展開を見せる新分野の研究手法と成果を、日欧の第一線の研究者の知を結集し、かみ砕いて解説した入門書。

目次

はしがき

第1部 理論と方法論

第1章 歴史語用論の基礎知識――高田博行・椎名美智・小野寺典子

1.歴史語用論とはどんな分野なのか?

2.歴史語用論はどんなふうにして誕生したのか?
2.1 Jucker(編)『歴史語用論』(1995年)とそれ以前
2.2 過去15年間の進展
2.3 社会言語学との共通点
2.4 対照語用論との相違点

3.歴史語用論はどんなデータを用いるのか?
3.1 話された音声データの欠如
3.2 Koch and Oesterreicher(1985)と Biber(1988)のモデル
3.3 文学テクスト
3.4 裁判記録
3.5 手紙(書簡)テクスト
3.6 (外)国語教育の教科書、文法書、辞書

4.歴史語用論にはどんなアプローチがあるのか?
4.1 アプローチの概観
4.2 ヨーロッパ的伝統とアメリカ的伝統――そして定義
4.3 Jacobs and Jucker(1995)による分類
4.3.1 語用論的フィロロジー/4.3.2 通時的語用論
4.4 Brinton(2001)による分類

5.歴史語用論の具体的な研究対象は何なのか?
5.1 談話標識(ディスコースマーカー)
5.2 主観化と間主観化
5.3 文法化と語用論化
5.4 呼称(アドレス・ターム)
5.5 発話行為
5.6 ポライトネス

6.歴史語用論はどんなふうにコーパスを使いこなすのか?
6.1 コーパスの発展
6.2 アノテーション

7.歴史語用論にはどんな将来があるのか?

第2章 コーパス言語学と歴史語用論――Irma Taavitsainen [中安美奈子 訳]
     ヘルシンキコーパスの貢献

1.はじめに

2.言語の変異とコーパス

3.コーパス言語学は言語学研究のパラダイムをどのように変えたのか

4.ヘルシンキコーパスとその特長

5.ヘルシンキコーパスに続く第二世代コーパス

6.ヘルシンキコーパスおよびその他の歴史コーパスの利用法

7.コーパスを使った歴史語用論研究

8.将来の動向

第3章 文法化と(間)主観化――Elizabeth Closs Traugott [福元広二 訳]

1.序

2.文法化

3.(間)主観化

4.論争中の問題

第2部 ケーススタディー

第4章 談話標識(ディスコースマーカー)の歴史的発達――小野寺典子
     英日語に見られる(間)主観化

1.はじめに

2.談話標識の(間)主観化

3.英語 because (cos) の間主観化
3.1 従属接続詞 because
3.2 従属接続詞 because から、独立した談話標識 cos へ

4.日本語の「な」系終助詞・感動詞の間主観化
4.1 詠嘆から呼びかけへ。終助詞から感動詞へ。
4.2 間主観的「呼びかけ」から、より間主観的な「念押し」へ

5.談話標識(ディスコースマーカー)の歴史的発達
5.1 談話標識の歴史的発達の研究とは?
5.2 談話標識の歴史的発達研究の今後

6.まとめ

第5章 シャーロック・ホームズの英語に見られる挿入詞の機能――秋元実治

1.はじめに

2.データ

3.先行研究

4.挿入詞の分析
4.1 評言節( Comment clause )
4.2 I dare say
4.3 That の有無
4.4 間接条件法

5.結論

第6章 何を「誓い」、何を「呪い」、何を「願う」のか?――椎名美智
     初期近代英語期の裁判と戯曲の世界から

1.はじめに

2.イングランドにおける魔女裁判:歴史的背景

3.swear, curse, wish の意味の変遷

4.初期近代英語における swear, curse, wish の用法
4.1 SPC コーパスとは何か?
4.2 SPC における swear, curse, wish の出現数
4.3 用法別の出現率と用例
4.4 政治裁判における用例
4.5 コメディーにおける用例
4.6 考察

5.まとめ

第7章 チョーサーの『カンタベリー物語』における呼称――Andreas H. Jucker [東泉裕子 訳]

1.はじめに
2.呼称に関する先行研究
3.バースの女房の話
4.代案の提案
5.まとめ

第8章 敬称の笛に踊らされる熊たち――高田博行
     18世紀のドイツ語呼称代名詞

1.ハイジは召使いのセバスチャンをどう呼ぶのか?

2.敬意の「虫めがね」と「遠めがね」
2.1 敬称の Ihr の誕生(9世紀後半)
2.2 敬称の Er / Sie の誕生(17世紀前半)

3.呼称代名詞の迷路
3.1 敬称の Sie の誕生(18世紀初め)
3.2 最上階の Dieselben (18世紀後半)
3.3 呼称代名詞の深い森

4. du に当てられるスポットライト
4.1 「友情崇拝」
4.2  du への一本化の提案
4.3  Sie 優先の提案

5.呼称代名詞の「未来」図
5.1 呼称代名詞に関する公的診断書
5.2 悪弊に対する処方箋

6.現在に向かって

第9章 丁寧語の語源と発達――金水 敏

1.はじめに
2.日本語の歴史的資料に現れた敬語形式
3.丁寧語の発達
4.謙譲語から丁寧・丁重語へ
5.尊敬語から丁寧・丁重語へ
6.尊敬「ござる」の衰退

第10章 日本語における聞き手敬語の起源――森山由紀子・鈴木亮子
      素材敬語の転用

1.敬語と B&L のポライトネス・ストラテジーとの関係
1.1 ポライトネス・ストラテジーのひとつとしての敬語
1.2 ポライトネス・ストラテジーとして利用される聞き手敬語
1.3 敬語の機能はポライトネスの表現だけではない

2.素材敬語と聞き手敬語の歴史
2.1 歴史的視点から考えることの意義
2.2 古代日本語の敬語体系――尊敬語と謙譲語
2.3 被支配待遇

3.「ハベリ」の聞き手敬語化
3.1 900年代後半以降の「ハベリ」
3.2 過渡期(900年頃)の「ハベリ」とその解釈
3.3 仮想被支配待遇の「ハベリ」
3.4 被支配待遇の対人場面への転用の背景

4.まとめ

第11章 日韓語の文末表現に見る語用論的意味変化――堀江薫・金廷珉
      機能主義的類型論の観点から

1.はじめに

2.日韓両語の文法構造と語用論との相互関係・語用論的意味変化の方向性
2.1 言語類型論の観点から見た日韓両語の文法構造
2.2 アスペクト形式・使役構文の意味的・語用論的拡張

3.歴史語用論から見た日韓両語の「文末現象」
3.1 「文中接続形式(接続助詞、連結語尾等)」から「文末形式(文末詞)」へ
3.2 「連体形」から「文末形式(終止形)」の変化
3.2.1 歴史語用論の観点から見た韓国語の「連体形」の終止形化現象

4.結論

参照文献
あとがき
事項索引
人名索引
編者・執筆者のプロフィール

ジャンル