内容
語用論を超えて
人がコミュニケーションを行うにはどのような仕組みがあるのか。ことばはどのように生み出され、そして理解されるのか。これまで語用論と呼ばれてきた学問を超えて、人間のコミュニケーションの背後に存在する心とことばのはたらきに迫る。
目次
はじめに
第1章 認知とコミュニケーション(大堀壽夫)
1 はじめに
2 コミュニケーションの成り立ち
3 文の意味と発話の意味
3.1 言語の知識
3.2 文から発話へ
4 語用論の基礎
4.1 認知的アプローチ
4.2 直示機能と省略の復元
4.3 会話の原則と推論(i)
4.4 会話の原則と推論(ii)
5 語用論的現象の広がり
5.1 発話行為
5.2 前提(i)
5.3 前提(ii)
5.4 慣習的含意
5.5 新しい理論
6 談話の構成
練習問題
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第2章 指示語の理解:英語のit とthat(高橋英光)
1 談話の組み立てと指示語
2 it とthat の使い分け
2.1 現象1:互換性
2.2 現象2:言い換え
2.3 現象3:文中の役割分担
3 語用論と機能言語学の分析
3.1 語用論の分析
3.1.1 Ariel(1988、1990) の分析
3.1.2 Gundel、et al.(1993) の分析
3.2 機能言語学の分析
3.3 まとめ
4 認知言語学の分析
4.1 具体性の度合い
4.2 際立ち度
4.3 記憶の領域
5 語用論と機能言語学と認知言語学の接点
6 日本語の「それ/あれ」
練習問題
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第3章 相・時制・法(樋口万里子)
1 英語の節構造と時制、法、そして相
1.1 英語の相
1.2 進行形のメカニズムと相
2 英語の時制の意味機能
2.1 これまでの見方の限界
2.2 認知文法の時制論
2.3 英語の単純現在形のメカニズム
2.4 単純現在形と遂行文
3 英語の法
3.1 現実と非現実:法助動詞の存在
3.2 「過去形」の法助動詞
練習問題
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第4章 節を超えて:思考を紡ぐ情報構造(樋口万里子・大橋 浩)
1 節から文へ、そして談話へ
2 条件文と談話をめぐって
2.1 複文と図―地の区分
2.2 情報構造と条件節・主節の談話機能
2.3 対人機能
2.4 まとめ
3 節を超えた構造から見える日本語の時制
3.1 日英語の時制
3.2 日本語のコンテクスト依存性とル形/タ形の相対性
3.3 小説に見られる時制現象
3.4 ル・タ・ティル
3.5 まとめ
4 文とパラグラフの並行性に見られる日英語の言語化パタン
練習問題
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第5章 レトリックの語用論(大森文子)
1 レトリックと認知の仕組み
2 命名のレトリック
2.1 あだ名と認知
2.2 命名の有契性
3.レトリックに関する語用論的研究
3.1 レトリックと語用論
3.2 グライスの「会話の含意」論
3.3 サールの語用論的解釈の原則
3.4 リーチの語用論原理
3.5 スペルベルとウィルソンの関連性理論
4 レトリックと認知言語学
練習問題
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第6章 認知・談話・レトリック(大森文子)
1. レトリック再考
1.1 メタファー
1.2 メトニミー
1.3 対義結合
1.4 シネクドキー
1.5 転移修飾語
2 レトリックと談話
2.1 連句における談話
2.2 和歌における談話
2.3 時空を超えた談話のレトリック
3 日英比較によるメタファー分析:水の流れを中心に
練習問題
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第7章 ディスコースと文化の意味(松木啓子)
1 言語のコンテクスト依存性
2 「ディスコース」再考
3 「文化」再考
4 ディスコースと文化をめぐる二つの大きな流れ
4.1 語用論的原理と文化比較
4.2 ポライトネス
4.3 「ことばの民族誌」におけるディスコースと文化の意味
4.4 相互作用としての異文化間コミュニケーション再考
5 ディスコースと文化の意味の広がり
5.1 会話分析と意味の共同構築
5.2 コンテクストからコンテクスト化へ
5.3 記号論的視点と指標性
練習問題
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第8章 物語の構造と発達(大堀壽夫)
1 物語への関心
2 物語の構造(i):筋の展開から
2.1 プロップ:ロシア魔法民話の構造
2.2 バートレット:物語の記憶と変容
2.3 物語の「文法」
3 物語の構造(ii):因果性と時間制
3.1 筋立てから語り方へ
3.2 物語の前景と背景
4 他動性から見た言語化のパタン
5 物語る能力の発達
5.1 初期の段階
5.2 時間性の現れ
5.3 別世界の構築
6 物語の社会的意味
6.1 相互作用から見た構造
6.2 物語の基本特性
6.3 なぜ語るのか
練習問題
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付録
参考文献
索引