内容
言語のもつ音調の本質を明らかにする
アクセント、トーン(声調)、イントネーション……どの言語も何らかの形で持っている「音調」とは何なのか。日本語諸方言に加え、朝鮮語、中国語など東アジア諸言語の共時的な音調体系をも探る中で、日本語にも「語音調」方言があることなど、類型論的な広い視点からの研究成果を明らかにする。語構成や文構造と音調の関係など、ヒトの言語のもつ音調の本質を明らかにし、日本語アクセントについても、新たな光を当てる好著。
目次
第1章 音調とは何か
はじめに
1 「音節」と「モーラ」
2 「アクセント」と「トーン(声調)」
3 「ピッチアクセント」と「ストレスアクセント」
4 「数える単位」と「狙う単位」
5 「イントネーション」
第2章 音調の類型と比較
1節 東アジアにおける九州方言
1 九州の中の世界と世界の中の九州
2 方言とは何か
3 言語・方言の比較対照
4 なぜアクセントか
5 アクセントの特徴
6 位置のアクセントと種類のアクセントが共存する方言
7 ストレスアクセントとピッチアクセント
8 日本における九州方言の位置
9 世界における九州方言の位置
10 言語・方言の類似性の原因
2節 日本語と日本語周辺諸言語の音調システム
――特に複合名詞におけるアクセントと声調について
1 複合語アクセントと変調
2 日本語
3 朝鮮語 晋州方言(慶尚南道)
4 漢語
5 アルタイ諸語
6 中国大陸の漢語・アルタイ諸語以外の言語
7 複合語における狭義のアクセント
――朝鮮語のアクセント方言
8 まとめ
3節 語声調方言
――佐柳島と真鍋島のアクセント
1 佐柳島のアクセント体系
2 真鍋島のアクセント体系
3 語声調言語とアクセントの位置
4節 朝鮮語晋州方言のアクセント体系
1 晋州方言のアクセント型
2 名詞のピッチ型
3 四つの声調を持つ語声調方言
5節 朝鮮語慶尚道方言の長母音について
1 序論
2 2種類の長母音
3 結論
6節 朝鮮語諸方言アクセントの系譜再構の試み
1 資料
2 各方言アクセントの音韻論的解釈
3 系譜の再構
7節 朝鮮語のアクセント:共時的及び通時的研究
1 朝鮮語アクセントに対するこれまでの解釈
2 金海方言
3 中期朝鮮語
4 昌原・大邱・霊山・ソウル方言
5 歴史的変化
第3章 アクセントの基底表示と担い手
1節 書評 金田一春彦
『国語アクセントと史的研究――原理と方法』
1 日本語はトーン言語か
2 拍と音節について
2節 アクセントの解釈をめぐって
――金田一春彦氏へのお答えの一端として
1 平安時代の日本語
2 現代日本語
3 朝鮮語
4 拍と音節
3節 アクセント分布に見る日本語の古層
1 方言が持つアクセントの特徴
2 数える単位
3 アクセントの担い手
4 アクセントの「位置」が「種類」か
4節 東京方言におけるアクセントの担い手と複合の熟合度
1 音節がアクセントを担う
2 モーラがアクセントを担う
3 辞書内(1語)と辞書外(2語)
4 単語連続と複合語
5 まとめ
5節 アクセントについての若干の覚書き
1 古典ラテン語のモーラは言語的単位であるか否か
2 関西方言等における「テー」《手》のような形は2モーラ
3 東京方言のアクセントの担い手はモーラが中心か音節
4 東京方言において「ゲンジモノガタリ」《源氏物語》は複合語
5 現代朝鮮語晋州方言のアクセント体系は、単語声調
6 金次均氏の挙げる朝鮮語昌原方言のA+B型の単語の連続
6節 アクセントの単位
――特にその担い手について
1 アクセントの単位とは何か
2 佐柳島、真鍋島のアクセント
3 伊吹島方言
第4章 アクセントとイントネーション
1節 「アクセント」早わかり
1 アクセントとは何か
2 ピッチとストレスの違い
3 声調(トーン)とアクセントの違い
4 アクセントの分類
2節 東京アクセントのピッチ曲線
1 はじめに
2 「平板型」と「起伏型」
3 語頭の「低」
4 言語的情報とピッチ曲線との関係
3節 単語のアクセントと文のアクセント
1 英語・ドイツ語のアクセント
2 日本語のアクセント
3 文音調
4 強勢
5 構造の曖昧性など
4節 文における声の高さの型について
1 序
2 周期前適用規則
3 周期適用規則
4 周期後適用規則
5 「低いはじまり」について
6 まとめ――構文構造と音形構造
5節 東京方言の文末のアクセントとイントネーション
1 アクセントとイントネーション
2 アクセント
3 イントネーション
4 最後に
5 文末における形態素の組合せの例